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「じゃあ、マリアージュのイートインの作ってくる」
瑠維がキッチンの中へ入って行った。
「何か違うのかい?」
「うん。
テイクアウトだとアイスをコーンに盛るだけなんだけど、イートインならスイーツやパンケーキとかがつくんだ。
それにね、瑠維が焼くパンケーキは、マリアージュのより美味しいんだよ」
隣に座った龍嗣の膝に移り、璃音が上機嫌で笑う。
龍嗣の胸に背中を預け、ニコニコしている間にも、キッチンからフワフワと良い香りが漂って来た。
「璃音、甘さはどうすんだ?」
「あんまり甘くないのがいいなぁ…」
「りょーかい」
瑠維は、手際良くパンケーキを焼き上げていく。
顔色の良くない弓削には仄かに甘く、龍嗣にはバターを利かせ、璃音の分は甘さを少し控えた物を焼いた。
弓削と龍嗣には温野菜とジュウジュウ音を立ててはぜる粗挽きソーセージを添えて、シンプル目に盛り付けを。
璃音にはパンケーキの他に苺やブルーベリー、アイス等を盛り合わせて仕上げる。
「ほい、出来たぜ?」
ダイニングテーブルにそれぞれの皿が並べられ、朝食になった。
「「いただきます」」
全員が一口頬張ると、それぞれから称賛の言葉が洩れる。
「ほう、これは美味いな」
「本当に…美味しいです。
瑠維様は、料理の才能がおありだったんですね」
味にうるさい弓削も、素直に驚いた。
「元々は璃音の食が細いから、何とか食わせようってのとか…。
あとは、アイスクリームを作る道具を、璃音が俺に作ってくれたのがきっかけなんだよ。
だから、そんな大したことねーし…」
耳まで真っ赤になってボソッと言う瑠維。
「でも、瑠維が作ってくれるのは、いつも美味しいよ」
にっこりと璃音に微笑まれて、瑠維の顔はますます赤くなる。
「さ、冷めるから早く食えよ?」
当たり障りのない事しか言えず、瑠維は内心舌打ちをしていた。
『あー、もうっ!!
そんな顔されたら、何にも言えねえじゃねーか…っ
何だよ、もう…』
誘うような甘い香りが消えた訳も、雰囲気が違うのも、何と無く察しはつくのだ。
『やっぱオッサンと気持ちが通じて、完全に番いになったんだろな…。
指輪なんかしちゃってるし。
あーあ…、コクる前に玉砕かよ…』
切ない気持ちのまま、瑠維はパンケーキを口に押し込んだのだった。
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