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「…璃音」 「なぁに?」  上機嫌で食べ進める弟に、瑠維は一言だけ突っ込んだ。 「お前さぁ…、なんでオッサンの膝に乗ったまま食ってるワケ?」 「「……………」」  ナイス瑠維!!と、猫と弓削が目配せをする。 「なんでかな…、わかんない…」  龍嗣も不思議そうな顔をしているが、降ろす気もないらしい。  二人とも「なんでだろうね」と首を傾げつつも、瑠維の視線が痛くなったのか、璃音は龍嗣の膝から降りようとする。 「別に重くないし、そのままでいいんじゃないのか…?」  弓削が煎れたエスプレッソを飲みながら、龍嗣が璃音の腰を掴まえた。 「抱き心地もいいし、この方がしっくり来るんだから、別にいいぞ」 「ウチの弟を抱き枕扱いすんのは、やめてもらいたいな…」  ギリギリ歯軋りをしながら、瑠維が苺をフォークで刺す。  流石に、龍嗣以外の全員の顔色を見ていてマズイと思ったのか、璃音が隣の椅子に移ろうとする。 「璃音様が空気を読んで下さってるんですから、旦那様も少しは状況をお考え下さいね…?」  額の青筋が太くなった弓削が、サックリと龍嗣を撫で斬りにする。 「龍嗣…、離して…、ね…?」  璃音が体の向きを変え、向かい合わせで座って龍嗣を見上げて声をかけるのだが、腕は一向に緩まない。 「龍嗣………?」 「ここ何日かお預け喰らったのに、私が我慢出来ると思うか?」 「………」  昨夜、しっかりがっついただろうがっ!!と、猫と弓削が内心突っ込む。 「……暫くスキンシップも制限されるんだぞ…?  私が我慢出来ると思うか?」 「………龍嗣、我が儘だもんねぇ…」  ため息をつく璃音を、弓削と瑠維、猫が「コラ!!ほだされるな!!」という目つきで睨んでいる。 「その我が儘な私が、我慢出来ると思うか?」 「………無理だよねぇ…」  璃音の言葉に、二人と一匹が切れそうになったその時、璃音が両手で龍嗣の頬に触れ、額と額を合わせる。 「でもね…?  龍嗣は大人だから、堪えてもらわないと…。  白川先生から出される条件も、どんどんきつくなるかも知れないよ?  だって、弓削さん、先生から龍嗣のお目付け役にされてるよ?どうする…?」  璃音がゆっくり噛むように、龍嗣に言い聞かせた。

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