154 / 454
・
総一の言葉に固まった龍嗣と、後ろの弓削達を交互に見遣り、璃音だけが首を傾げている。
「………?」
「あ、ゴメンっ、変なこと言っちゃったな~。
今のナシねっ!!」
リビングに漂う微妙な雰囲気に、総一が慌てた。
龍嗣も何かをごまかす様に、咳ばらいをする。
「え?なになに?何で皆が変になってるの?」
総一の問題発言を聞き逃したのと、一人だけ意味が分からず頭の周りに疑問符だらけの璃音。
「璃音様、総一は単にお馬鹿なだけですので、お気になさらさいで下さい。
それより、学園祭の衣裳をどうにかしませんと…」
「………女装は嫌だなぁ…」
「大丈夫です。
依留とまりあに任せておけば、充分可愛らしくなりますから」
「………」
「仕方ないなあ…」という雰囲気の顔で、璃音は弓削達の方に歩いていく。
勿論、龍嗣と繋いだ手は握ったままで。
「嫌ぁね、このスカートの丈、中途半端だわ」
「ブラウスのフリルも、エプロンの丈も合わないわ…。
依留、どうする?」
袋から引っ張り出した衣裳を検分しながら、まりあと依留が不機嫌になっている。
「ねぇ、こっちの和服も最悪よ?
見て?この柄…」
猫まで検分に混ざっていた。
一枚一枚を璃音に当て、長さや生地の具合を見ているのだが、どうにも合わないらしい。
「合わないとこは、詰めたりして構わないって担任の先生は言ってたから、一部は切ったりしてもいいんじゃないすか?」
瑠維の言葉に、まりあと依留が高速で振り返った。
「「切ってもいいのっ!?」」
「…多分」
二人の顔つきが変わり、メイド用の服を持つなり、大胆にハサミを入れはじめた。
「膝丈はどうする?」
「膝上10センチは譲れないわね…。
ウエストが緩いから、いっそフワフワにしてみようかな…」
切り落とした生地は別の箱によせておき、再び璃音に合わせてみる。
「どう?総一。
そっちから見て、バランス取れたかしら?」
「「……スカートが、あと5センチかな…」」
総一だけではなく、龍嗣、瑠維が同じ意見でハモった。
「仕方ないわね…。」
まち針で調整して、再び璃音に合わせると、全員が頷いた。
「そうね、こっちが可愛いかも。
ハイソックスは、ガーターつけた方が良さそうね」
猫までが注文をつけだしていた。
ともだちにシェアしよう!