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 総一の言葉に固まった龍嗣と、後ろの弓削達を交互に見遣り、璃音だけが首を傾げている。 「………?」 「あ、ゴメンっ、変なこと言っちゃったな~。  今のナシねっ!!」  リビングに漂う微妙な雰囲気に、総一が慌てた。  龍嗣も何かをごまかす様に、咳ばらいをする。 「え?なになに?何で皆が変になってるの?」  総一の問題発言を聞き逃したのと、一人だけ意味が分からず頭の周りに疑問符だらけの璃音。 「璃音様、総一は単にお馬鹿なだけですので、お気になさらさいで下さい。  それより、学園祭の衣裳をどうにかしませんと…」 「………女装は嫌だなぁ…」 「大丈夫です。  依留とまりあに任せておけば、充分可愛らしくなりますから」 「………」 「仕方ないなあ…」という雰囲気の顔で、璃音は弓削達の方に歩いていく。  勿論、龍嗣と繋いだ手は握ったままで。 「嫌ぁね、このスカートの丈、中途半端だわ」 「ブラウスのフリルも、エプロンの丈も合わないわ…。  依留、どうする?」  袋から引っ張り出した衣裳を検分しながら、まりあと依留が不機嫌になっている。 「ねぇ、こっちの和服も最悪よ?  見て?この柄…」  猫まで検分に混ざっていた。  一枚一枚を璃音に当て、長さや生地の具合を見ているのだが、どうにも合わないらしい。 「合わないとこは、詰めたりして構わないって担任の先生は言ってたから、一部は切ったりしてもいいんじゃないすか?」  瑠維の言葉に、まりあと依留が高速で振り返った。 「「切ってもいいのっ!?」」 「…多分」  二人の顔つきが変わり、メイド用の服を持つなり、大胆にハサミを入れはじめた。 「膝丈はどうする?」 「膝上10センチは譲れないわね…。  ウエストが緩いから、いっそフワフワにしてみようかな…」  切り落とした生地は別の箱によせておき、再び璃音に合わせてみる。 「どう?総一。  そっちから見て、バランス取れたかしら?」 「「……スカートが、あと5センチかな…」」  総一だけではなく、龍嗣、瑠維が同じ意見でハモった。 「仕方ないわね…。」  まち針で調整して、再び璃音に合わせると、全員が頷いた。 「そうね、こっちが可愛いかも。  ハイソックスは、ガーターつけた方が良さそうね」  猫までが注文をつけだしていた。

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