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ツインテールでうなだれていた璃音が、ゲストルームに着替えに行っている間に、今度は総一が和服を広げた。
「こりゃ、璃音には合わない柄だなあ…」
確かにピンク色で可愛らしい柄なのだが、微妙に気に食わないらしい。
「帯とのバランスが良くないんだよな…」
暫し考え、総一はバスケットから何本かの反物や生地を取り出している。
黒地に桜が散る柄や、薔薇、牡丹など、様々な柄の生地を一つずつ検分していると、璃音が戻って来た。
「………ただいま…」
本人は、かなり低いテンションなのだが、待ち受けていた側は違った。
「「かっ、可愛い…っ!!」」
完全にメイドと化した璃音に、龍嗣だけでなく、全員が喜んでいる。
艶やかな黒髪は、ゆるふわなツインテールに結われ。
ゴスロリに近い作りのメイド服は、高い襟や半袖に細かくクオリティーの高いレースがふんだんに使われていて。
スカートは、幾重にも付けられたペチコートによってフワリとふくらみ、可愛らしい。
不思議なことに、膝上15センチ位なのに違和感も無い。また、清楚な白いエプロンにも、ギャザーを寄せたフリルがつけられて、メイド服の可愛さを倍増させている。
トドメは白いニーハイソックスで、ギャザーを寄せて作ったガーターが取り付けられ、可愛らしさの中に、少々危ういイメージも付け加えている。
「驚いたな…。
凄く似合ってるよ、璃音。
改めて惚れ直しそうだ…」
龍嗣が抱き上げて、額に口づける。
「女装を喜ばれるのって、もの凄く複雑な気分…」
苦笑いして困っている璃音が余計に可愛く思えてしまう。
たっぷり重ねられたペチコートの下に、とてもトランクスを穿いているとは思えない仕上がりだった。
「とりあえず、メイドはこれでいいとして…。
着物はどうする?
町娘風にするか、武家の娘風にするか…?」
「大店の娘風ならどう?
振袖にして、帯も長く流したら可愛く仕上がるんじゃない?」
「なら、ちょっと大振りの花がついててもいいかもね…」
総一、まりあ、依留が反物を検分しだす。
「振袖なら、私が手配しようか?」
龍嗣が申し出るが、璃音に窘められる。
「用意するのは構わないけど、国宝級の馬鹿高いのとかはやめてね…?」と。
「やりかねないな」と、弓削は苦笑いをしていた。
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