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「あとは、髪だな…」
ツインテールを解き、敢えてそのままサラリと流す。
左サイドの髪に、赤いリボンを混ぜて三つ編みを入れ、太めのリボンで作った花を数個配置した。
「ん…、口紅変えてみるか…。」
清楚なピンク色から、少し鮮やかな紅色を入れた。
「「………っ」」
固唾を飲んで見守っていた全員の表情が一変する。
「な、なぁに?なんか変?」
立ったまま、璃音が固まった。
「いや、変なんじゃなくて、かなり…その………」
「そうですね…。
変ではなくて、あまりにも璃音様が鬼夜叉生き写しで驚きました」
ゴスロリメイドの璃音は、どちらかと言うと可憐な美少女のイメージだった。
純真で無邪気な、黒いイメージが皆無な。
だが、着物の璃音は、可憐さに隠された獰猛さや狡猾な部分もあり、少しあだっぽさが覗く。
総ての人間を魅了しながらも、不用意に近づく不埒者を一撃で倒してしまうような、見えない炎で総てを焼き尽くしてしまうような、危うい暗黒の姫。
それが璃音の母、荊櫻だった。
無意識に作り上げたとは言え、あまりに生き写しに出来上がった璃音の姿は、弓削や総一、まりあ、依留を戦慄させた。
目に見えない刃で大気を切り裂き、大男を一撃必殺で沈める悪魔の女…。
愛する晶と共にこの世を去った筈の、その鬼夜叉が目の前に立っている事に、龍嗣も瑠維も驚愕した。
「凄いな…。
元々似ていると思ってたけど、ここまで瓜二つになるなんて思わなかったぞ?」
戸惑う璃音の瞳は、長い睫毛に縁取られ、艶やかな闇に満たされている。
白磁の肌は、ほんのりと上気して、甘く香るようだ。
未だ幼いその姿が至高の獣に育った時は、今よりももっと匂いたつようになるだろう。
「………似てる?」
無邪気に首を傾げる璃音は、甘さと穏やかさ、剣呑さと危うさを秘めた顔で苦笑いした。
「君のお母さんにそっくりだよ?
でも…」
「でも?」
「総てを灼き尽くすというより、闇や悪しき者だけを灼き消してしまう感じかな?
可愛いと言うより、美しいよ。
誰も居なかったら、押し倒してるかも知れないな」
クスクス笑い、璃音を抱き上げると、龍嗣は艶やかな頬に口づけた。
「もうっ、皆見てるってば…」
璃音の困った顔が見たくて、今度は軽く唇を啄んだ。
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