159 / 454
・
いつもの姿と違い、見ようによっては妖艶にすら見えてしまう璃音の姿は、龍嗣だけでなく弓削や瑠維をも魅了した。
荊櫻に生き写しなのに言葉遣いは子供子供していて、そのアンバランスさが妙に合うのだ。
床に降ろしてもらい、総一がデジタルカメラで撮った画像を見せて貰う璃音。
「……うっ、ホントに母さんそっくりだ…」
苦笑いするしかない。
「今度は、矢絣(やがすり)に袴、ブーツにするぞ」
帯を解き、矢絣の着物と袴に着せ替えてブーツを履く。
花やリボンを外し、ポニーテールにすると、結った部分を大振りのリボンと組み紐で飾る。
「…ん、まあ、こんな感じかな?」
文明開花時期の女学生といった風情の璃音が出来上がった。
「あら…、キリッとしていて、こういうのも良いわね…」
猫が頷きながら検分する。
すかさず、総一がデジタルカメラで撮影し始めた。
「矢絣もいいが、こっちの桜はどうかな…?
全体に散ってる訳じゃないから、袴の色合いとも合いそうだぞ?」
龍嗣が、フワリと璃音の肩に桜柄の一枚をかけた。
キリッとしつつも甘い感じが出て、矢絣よりもしっくりしたような気がする。
「意外と、璃音ってピンク色とか似合うんだな…。
ん、やっぱ番いの相手だけあるかも。
璃音に一番似合うのを嗅ぎ分けるんだもんな~」
腕組みしつつも苦笑いする総一。
改めて璃音に着付けし直し、デジタルカメラで撮影する。
「あ~、うんうん。桜のがピッタリだ」
リボンと紐の色を変え、バランスを整えて、再び撮影する。
「うん!!最高だなっ!!
氷室さん、携帯の赤外線通信を起動して貰えますか?」
デジタルカメラのデータ送信のセットアップをし、総一は璃音のメイド、和服、女学生姿の写真を転送した。
「画素数もかなり多いので、携帯の待ち受け画面に使っても、何の遜色もない筈ですので。
普段の何気ない顔の写真もいいけど、こういうのも萌えるでしょうし。
あ、後でメモリーカードかディスクに入れてお届けしますよ」
「あ…ありがとう」
データボックスにセットすると、クオリティーの高い写真が表示された。
いつもと違う璃音の顔に、龍嗣もドギマギしてしまう。
『これは、絶対消さないぞ!!』と、固く心に決める龍嗣なのだった。
ともだちにシェアしよう!