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龍嗣の反応にニッコリ笑い、総一は三枚の写真をプリントアウトした。
「こっちは璃音に。
担任の先生に了解を貰えたら、璃音のコスチュームも本番用できっちり作るし、クラスの子達のコスチュームも取り掛かるから。
ちゃんと渡しとくんだぞ?」
念入りな程に念を押し、総一は荷物を片付け始めた。
「やけに念押しするけど、何かあるのか?」
気が重そうな璃音が『それ、今聞くワケ?』という顔をしている。
「ああ…。
学園祭の模擬店とか演目などを、投票でランキングするんですよ。
で、各学部の優勝したクラスは、次年度の学費が総て無料になるんです。
学用品から修学旅行まで総て無料になりますし、修学旅行の行き先もランクアップしたり…。
その上、交換留学生のリストの上位に入れますし、現役東大生等の学園時代のノートや試験の模範解答も上限なく貰えますし。
その恩恵は、担任にも行きますからね。
必死になるでしょうねぇ…」
総一が説明した。
「こいつのいるクラス、毎年優勝してるし、二年間、学園全体の総合優勝してるから、担任も必死だと思う…。 昨年は舞台でタイタニック…。
ああ、ラブシーンは無しだったみたいだけど。
で、一昨年はお化け屋敷だった。
二年連続女装させられてるし」
瑠維の言葉に、龍嗣が振り向く。
「タイタニックは、何の役だったんだ?」
「ローズ…」
言いにくいが、仕方なく白状する璃音。
「ヒロインじゃないか…。
じゃあ、お化け屋敷は?お化け役で女装はないだろ?」
「入口の案内で…一日目が猫娘で、二日目が妖精で…、三日目がヴァンパイア…」
「で、女装させられてたと」
「うん…。
毎回、女装は嫌だって言ったから、今年はしなくていい事になってた筈なんだけど…。
寝込んでいる間に、決められちゃったみたいで…」
璃音は困った顔のまま、龍嗣を見る。
「龍嗣が嫌なら、僕、断るよ…?
僕、元々乗り気じゃないんだから、女装したの見せるのダメだって言うなら、僕…っ」
女学生の姿のまま、璃音は龍嗣を見上げる。
「僕は、龍嗣だけが喜んでくれたらそれでいい…。
必要以上に注目されたりとか、得意じゃないから…」
珍しく後ろ向きな璃音の頬を両手で挟むように触れ、龍嗣は微笑んだ。
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