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「私は見たいな…。
そりゃあ、君の可愛らしい姿を誰かに見られたり、接客の時に良からぬ事をされたりしたら嫌だというのもあるけれど…。
だけど、来年大学に飛び級する君は、クラスメイトと一緒に何かをする機会は最後のようなものだろう?
なら、一生懸命取り組むのも大事なんじゃないのか…?」
「………龍嗣」
「その分、後で埋め合わせをしてくれたらそれでいい…。
そうだ…な………、学園祭が終わったら、一日かけてゆっくりデートしようか…」
優しく微笑む龍嗣に、璃音は目をしばたたく。
自分の事になると、途端に嫉妬深くなる龍嗣に気を遣い、色んなことをセーブしがちな璃音を、龍嗣自身も気にかけていたのだ。
自分の可能性や、未来の幅を狭めているようだったから…。
「龍嗣…、いいの?」
「君の一日をくれるなら、それでいい…。
その時に、誰にも見せた事がないような可愛い君を見せてくれるなら、それで大丈夫だと思う」
フワリと。
華奢な体を抱き上げると、細い腕が龍嗣の背中に回された。
「龍嗣…、怒らない?」
「怒らないよ」
「嫌じゃない?」
「嫌だと思う部分もあるけれど、学園の行事絡みだからそれはいいよ」
「女装でも?」
「女装でも」
ゆっくり視線を合わせて穏やかに返すと、璃音は詰まっていた息を深く吐いた。
「………ありがとう、龍嗣っ」
誰よりも愛しい男の額に口づけを落とす璃音。
「女装だろうがなんだろうが、君が一生懸命頑張るならそれでいい。
そんなに気を遣わなくていいから、少しは我が儘になりなさい。
確かに、君を独占して、部屋に閉じ込めて、誰の目にも触れないようにしたい。
ずっと抱き込んで腕の中から離したくないとも思うけれど、それは君を苦しめるだけだからね。
一生愛し抜くと誓った恋人を、少しは信用してくれないとな」
下から覗き込んだ璃音の顔は、いつか龍嗣を喪うかもしれないという不安定さが抜け落ち、ただただ柔らかく微笑んでいた。
その甘やかな唇に自分の唇を重ねて、愛情を吹き込む。
少しの淫らさもない口づけと啄みを、誰一人咎めはしない。
しない、と言うより出来なかったのだが…。
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