162 / 454

嵐の前触れ

 ギシ…ッ 「ん……っ」  ギシッ、ギシ…ッ 「ん…ぅ………っ」  苛む痛みに、上半身だけ裸の璃音が身じろいだ。 「痛い所は何処だい…?」 「ここ…」  涙を滲ませて訴える璃音を宥めるようにして、龍嗣は腕を伸ばす。 「そうか、此処だな?」  ギシギシと軋む璃音の体を優しく撫で、汗で前髪が張り付く額に口づけを落とした。 「こっちも…」  伸ばした腕の軋んで痛い場所に口づける。  痛みに乱れたままの呼吸が、一層切なげになった。 「ん………っ、んんっ!!」  体を丸め、シーツをきつく握り締める手は、痛みに耐える度に力が籠められるせいで、時折真っ白になる。 「璃音、俯せにするぞ?」  時間をかけて横向きから俯せにして、パジャマを下にずらし、骨盤から腰椎の上の方まで、労るように舐めた。 「や…、あ…っ、ああっ!!」  チロチロと舌先で舐めるのではなく、動物が傷を癒す為に舐めるように、ゆっくりと優しく舌を這わせていくので、璃音は痛みと快感に全身を震わせる。  チュ…ッ。  肩甲骨の間を吸われ、同時に足の付け根を撫でられて、必死で踏ん張っていた腕が力を失い、璃音はベッドにくずおれた。 「や…、あっ、ダメ…、ダメ…っ!!」  やんわりと包むように触れる手に、じれったさと愛おしさが込み上げる。  本当は、骨が折れてしまう程にきつく抱きしめられたいのに、龍嗣は優しいタッチで触れてくる。  ゾワリ…。  ズクリ…。  この上ない快感と、関節を苛む痛みが璃音の理性を搦め捕る。 「あ…っ、あっ、ああ…っ」  うち震える体を抱き寄せ、胸の蕾をキリキリと摘まむと、華奢な体がびくびくと跳ねた。 「や…あっ、あああ…っ!!」  涙を零し、掠れた声で啼いた璃音は、突き抜ける快感に意識を飛ばす。  未だ整わない息の璃音の額に口づけ、龍嗣は替えのパジャマを璃音に着せた。  あの別邸の夜から三週間…。  璃音の体が、遅れ(過ぎ)ていた成長を始めていた。  身長も少し伸び、腕や脚も伸びているし、経過は順調…と、白川クリニックから報告が入った。  ただ、日中は何ともないのだが、眠る頃になると関節が痛み出し、体中が軋む日々が続いている。  痛みは眠りを阻む程で、毎晩龍嗣が撫でてやっていたのだった。

ともだちにシェアしよう!