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 互いに絡めた指から伝わる体温は、いつもよりずっと高く感じた。  そう感じるのは自分だけなのだろうか…?  何となく居心地が悪くて絡め合った指を外し、龍嗣の右手と自分の左手を重ねて大きさを比べたり、親指を掴んだり離したりしていると、腰に回されていた龍嗣の左手が、少しだけ璃音の体を引き寄せる。 「………ん?」  上を向くと、穏やかな表情なのに、熱っぽい瞳の龍嗣と目が合った。  鳶色の瞳が綺麗だと見とれている内に、唇が塞がれる。  チュ…。 「ん………ッ!!」  軽く触れるような口づけなのに、体の芯を甘い痺れが駆け抜けて行った。  唇まで痺れが走ったのを、龍嗣はきっと気付いてる。  龍嗣に対して焦れているのも、きっと今のキスで見抜かれた。  そう思うと、今更ながらに心臓がバクバク跳ねてしまう。 「璃音?」  なんて声なんだろう。  いつも腰の辺りを痺れさせる声なのだが、今日はズクリと体の芯を突き抜けて行くようで…。  頭の芯まで灼け切れて溶けそうになる。 「璃音…?」  体中の弱い場所に火をつけて回るように、優しく甘く響いて。  心臓が何度も跳ね、鼓動がどんどん激しくなり、耳や脳の奥まで痺れてしまう。 「やっ、……んっ」 「璃…音?」  広い胸に耳を擦りつけるように縋ると、左耳に唇を寄せ、龍嗣が甘く囁く様に名前を呼んだ。 「璃音?」 「………っ!!」  優しく呼ばれただけなのに、全身がビクビクと跳ねてしまった。 「どうした…?」 「龍嗣の声…」 「ん?」 「龍嗣の声…聞いてるとね、足が、ガクガクする…。  手もふるふるして力入んないし、頭のなか溶けちゃう…。  名前呼ばれたら、心臓跳ねたみたいになるし…。  変だよね?  龍嗣の声聞いてるだけでおかしくなるんだよ…?」  声が上擦る。  顔が火がついたように熱い。  体がフワフワして、力も入らない。  それを、龍嗣は気がついているのだろうか? 「私の声は、君を狂わせるのか?」 「うん………」 「そんなに?」 「そうだよ…。  龍嗣はいつも僕を狂わせる。  声もそうだし、手も、指も。  唇も、舌も…。  もうね、全部。」「全部?」  龍嗣が目をしばたたいた。 「龍嗣の全部が、僕を狂わせるよ…。知ってた?」  言ってて恥ずかしくなり、璃音は俯いた。

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