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湯を張った浴槽で、璃音は腕を伸ばした。  お湯の中で伸ばした腕に、微かに軋みを感じて肘を撫でてみる。 『…本当に、伸びてるのかなぁ…?』  ここ二週間、眠る前になると関節が軋んで痛む。  時折、ギシギシという音が聞こえて、夜中に目覚めてしまったこともあったのだが…。 「成長に伴うものだから、いずれ収まるし心配ない」と言われているものの、本当に身長が伸びているのか、今ひとつ実感が無いのだ。 「どうした?」  後ろから璃音を抱くようにして浸かっていた龍嗣が、不思議そうな顔をして覗き込む。 「ん…、ホントに伸びてるのかなぁって、思ってね」  回された龍嗣の腕と自分の腕の長さを比べ、小首を傾げる様子が可愛くて、抱えるようにした腕に力が篭った。 「関節が軋むんだろう?  あまり大差が無いように見えても、ちゃんと成長出来てるって聞いたぞ?  それに、栄養もバランス良く回ってるっていう話しだったな…」  実際、本人に自覚は無くても、微かな成長は顕れている。  白川医師の診断でも、太鼓判を捺されたくらいだ。  ただ、元々の線の細さは如何ともしがたく、成長しても細身だろうなと予想されていた。  細身なら、それでも構わない。  身長が伸びても、自分の腕の中にスッポリと収まるのだから。  それこそ、自分好みのオーダーメイドみたいな状態に育ってくれそうだと、内心うっそり笑ってしまうかもしれない…。 「龍嗣…、なんか、えっちい事考えてる?」 「え……?」  いつの間にか、璃音が向きを変えていた。 「何だか、凄く嬉しそうなんだけど、顔が少しえっちい感じする…。」  下から覗き込んだ璃音が、龍嗣の頬を抓る。  お互い、向かい合わせになったので、璃音の下腹部が臍の下辺りに触れて、龍嗣は一瞬たじろいだ。 「いや、その…、順調に成長してるようで良かったな…と。  それに…」 「それに…?」 「私好みの体に成長してくれそうで嬉しいなと…」 「そういや、僕、龍嗣の好みってどんなか知らないや。  教えて?」 「ん…、顔はこのままで」 「…」 「体は細身で」 「…うん」 「程よく筋肉がついてる感じ…」 「………あのー…。  …………イメージすると、顔が母さんで、体が父さんなんだけど…。」 「………っ!!」  地雷を踏んだ瞬間だった。

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