182 / 454
・
湯を張った浴槽で、璃音は腕を伸ばした。
お湯の中で伸ばした腕に、微かに軋みを感じて肘を撫でてみる。
『…本当に、伸びてるのかなぁ…?』
ここ二週間、眠る前になると関節が軋んで痛む。
時折、ギシギシという音が聞こえて、夜中に目覚めてしまったこともあったのだが…。
「成長に伴うものだから、いずれ収まるし心配ない」と言われているものの、本当に身長が伸びているのか、今ひとつ実感が無いのだ。
「どうした?」
後ろから璃音を抱くようにして浸かっていた龍嗣が、不思議そうな顔をして覗き込む。
「ん…、ホントに伸びてるのかなぁって、思ってね」
回された龍嗣の腕と自分の腕の長さを比べ、小首を傾げる様子が可愛くて、抱えるようにした腕に力が篭った。
「関節が軋むんだろう?
あまり大差が無いように見えても、ちゃんと成長出来てるって聞いたぞ?
それに、栄養もバランス良く回ってるっていう話しだったな…」
実際、本人に自覚は無くても、微かな成長は顕れている。
白川医師の診断でも、太鼓判を捺されたくらいだ。
ただ、元々の線の細さは如何ともしがたく、成長しても細身だろうなと予想されていた。
細身なら、それでも構わない。
身長が伸びても、自分の腕の中にスッポリと収まるのだから。
それこそ、自分好みのオーダーメイドみたいな状態に育ってくれそうだと、内心うっそり笑ってしまうかもしれない…。
「龍嗣…、なんか、えっちい事考えてる?」
「え……?」
いつの間にか、璃音が向きを変えていた。
「何だか、凄く嬉しそうなんだけど、顔が少しえっちい感じする…。」
下から覗き込んだ璃音が、龍嗣の頬を抓る。
お互い、向かい合わせになったので、璃音の下腹部が臍の下辺りに触れて、龍嗣は一瞬たじろいだ。
「いや、その…、順調に成長してるようで良かったな…と。
それに…」
「それに…?」
「私好みの体に成長してくれそうで嬉しいなと…」
「そういや、僕、龍嗣の好みってどんなか知らないや。
教えて?」
「ん…、顔はこのままで」
「…」
「体は細身で」
「…うん」
「程よく筋肉がついてる感じ…」
「………あのー…。
…………イメージすると、顔が母さんで、体が父さんなんだけど…。」
「………っ!!」
地雷を踏んだ瞬間だった。
ともだちにシェアしよう!