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「理想のイメージ…、顔が母さんで、体が父さんって…」  再び、暫し考え込み、ふと、何かに気づく。  そういえば、母が漏らしていなかったか? 『あれは、晶に惚れていた奴だ』と…。  朧げな記憶を掘り起こし、自分を抱っこしていた男性が、切なげな眼差しを父に向けていた場面を思い出す。  それは…龍嗣ではなかったか?  そして、もう一つ。  父に瓜二つに成長したのは瑠維で…。  最初に龍嗣好みだったのは…。 「そういや、最初、龍嗣の好みって、瑠…維…だったよね…?  て、いうことは…。  龍嗣が好きだったのって…、もしかして、父さん!?」  思いっ切り、狼狽する龍嗣。  その顔は、図星を突いてしまったから…? 「む、昔の事だぞっ!?  今は、璃音が好みなんだからなっ!!」  真っ赤な顔の龍嗣は、璃音の肩を掴んだまま、あわあわと焦っている。  なるほど。  璃音の父、晶に想いを寄せていたのは、確かに龍嗣で間違いない。  晶と恋人になれなかった喪失感を埋める為に、男女の関係なく、且つ節操無く付き合い、取っ替え引っ替えした訳だ。 「……………」 「本当だぞ!?  体を繋ぎたいと思うのは君一人で、晶や瑠維は違うからなっ!!」  必死で弁明する龍嗣。 「……………」 「璃音っ!?」  完全に地雷を踏んだと、うろたえまくる姿が可笑しくて黙っていると、龍嗣が更に焦り始めた。  チュ………ッ。 「んなっ!?」  優しく重ねられた唇に驚き、龍嗣が浴槽に沈む。  がばっ!!ごぼごぼっ!!  派手に溺れた龍嗣を、璃音が器用に浴槽の縁へと掴まらせた。 「げほっ!!ごぼっ!!」 「大丈夫?龍嗣…?」  背中を摩ってやり、気遣う顔は怒ってはいない。  たが、焦っている龍嗣は気づかない。 「…は……っ、はっ」  咳込みが収まるまで、璃音は背中をさすり続けた。  暫くして、ゆっくり背中を摩られた龍嗣の息が整ってきた。 「………大丈夫?」  びしょ濡れになった龍嗣の前髪をかきあげ、よしよしと、頭を撫でる璃音。 「あ………、ああ……」  浴槽で溺れかけ、璃音にも、みっともない所を見られたのもあり、非常に罰が悪い。  それを感じて、璃音は龍嗣の頭をふわりと抱きしめる。 「………?」  思わぬ反応に、龍嗣の思考は完全に停止してしまった。

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