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ふ………っ。
「あの指輪は、本気で君に渡した」と言おうとして、言葉は途切れてしまった。
突然、視界が黒く塗り潰されてしまったから。
「え…?」
「停電みたいだね。
龍嗣、ちょっとの間、目をつむって」
パシャリと音がして、璃音の手が頬に触れた。
「窓から見た感じだと、ここら辺一帯が停電してるみたいだよ?」
「見えるのか?」
「うん。夜目が利く方だから割りとね…。
そろそろいいかも…」
目を開けると、暗がりの中、うっすらと璃音の体の輪郭が見える。
「ね、明かりが消えたから、少し星も見えるよ」
促されて見た先には、雲間から星が覗いていた。
「本当だ。
星なんて、久しぶりに見たような気がするな」
「たまには停電もいいかもね」
璃音が少し窓を開けると、冴え冴えとした初冬の空気が流れ込んできて、のぼせかけた肌を冷ましていく。
雲の隙間から差し込む月光が、出窓に手をついて空を見上げていた璃音を照らし出した。
穏やかに笑う顔も、仄かに光るように見える体も、すべてが龍嗣をひきつける。
「なぁに…?」
クスクス笑う璃音を引き寄せて、腕の中に抱き込むと、馴染んだ肌触りが安心感を与えてくれた。
「何と言うか…その…
好みの話しとか…、もう時効だからな?」
「ん?」
「今は、君が好みで…だから…」
もごもごと口ごもる龍嗣の様子を、璃音はじっと見ている。
「……言ってよ、その先…。
龍嗣の気持ち、聞きたい」
そう言われると、余計に墓穴を掘りそうで、龍嗣はますます口ごもる。
「う……」
口をぱくぱくさせるしか出来なくなり、再び冷や汗が流れている気がしてきた。
「じゃあ、落ち着いたら教えてね」
あまりに動揺する龍嗣が可笑しくて、璃音は笑うのを堪えてじっと待っていたのだが、堪え切れずに助け船を出した。
「……あ、ああ」
龍嗣の顔を下から覗き込んでいた璃音は、あからさまにホッとした隙をつき、無防備な唇を軽く啄む。
チュッ。
「「ん……」」
月明かりの中で、深く、浅く唇を啄み合い、自然に舌が絡まり合う。
龍嗣が璃音の舌根を突けば、璃音は龍嗣の上あごをなぞる。
璃音が龍嗣の舌を搦め捕れば、龍嗣は璃音の舌を引きずり出し、唇で甘く噛んだ。
「龍嗣…だい…すき…っ」
吐息混じりの声は、どこまでも甘かった。
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