187 / 454
・
「何処にいたって、璃音は夜目が利くから呼べば出て来る筈だろ?」
「……ええ。
何度かお呼びしたのですが、全く応答もいたしませんので…」
「寝てんのかな…」
怪訝に思い、璃音の部屋を覗いてみる。
「……」
ベッドは使われた形跡もなく、椅子も机も整然としており、どう見ても部屋にはいない。
弓削が書斎を覗きに行ったが、同じく無人だったようだ。
「リビングもダイニングも部屋も書斎もいないっつーことは、答えは一つなんじゃねえの?」
憮然として指摘すると、少し複雑な顔をする弓削。
「旦那様の部屋…でしょうね…」
深い溜息をつく。
「白川先生からは、最後までするなときつく言い渡されてはいますが、行為の真っ最中に踏み込んだら洒落にもなりませんね…」
敢えて踏み込まずに放置したいと、暗に匂わす。
「とりあえず、ドアに鍵が掛かってたらヤってると判断すりゃいいんじゃねえの?
つか、禁止されてんだろ?
止めなきゃまずいんじゃねえのかよ」
身も蓋も無い返答に、益々苦虫を噛み潰したような表情になる。
「面倒ですね…」
ブツブツ言いながらも、仕方なく龍嗣の部屋のドアノブを回してみる。
キシ…。
施錠されてもおらず、静かにドアが開いた。
「…旦那様……?」
潜めた声で呼びかけるが、返答はない。
ソファにも、デスクにも姿はなく、残るは寝室だ。
慎重にノブを回すと、今度もさしたる抵抗もなく、ドアが開いた…。
「「………?」」
椅子の上、ベッド、ベランダなどを確認するが、どちらの姿もない。
ただ、ベッドカバー等が微妙に乱れた形跡があり、どちらかがいたか、二人ともこの部屋にいたのだと推察できた。
『残ったのは、どう考えてもあの場所…。
まずいな…完全に出歯亀なんじゃないだろうか』
瑠維を促し、部屋を後にした方がいいのではと思案している間に、瑠維はもう一つのドアを開けた。
『…洗濯機にカゴ?まさかな…』
更に手前にあるドアを開けると、ふわりとした蒸気とともに、甘い花の香りがする。
そして、微かな水音や吐息も。
「………璃音?」
ライトを向けると、バスタブの中で二人が深く舌を絡ませ、淫ら過ぎるキスをしていた。
「なっ、何やってんだよ!!」
響いてきた瑠維の声に、後ろで弓削が身を硬くした。
ともだちにシェアしよう!