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「どうした…?」
気遣うように背中を摩られて、璃音は我に返った。
「え?あっ、なんでも…ない…」
硬い表情は消え失せて、いつもの無邪気な顔になる。
「らしくない顔をするから、びっくりするじゃないか。
大丈夫か? 湯あたりでも…?」
「ううん、大丈…」
勢いよく立ち上がったものの、フラリとよろけて龍嗣に倒れかかった。
「璃音っ!?」
抱き寄せて支えてやると、小さな手が背中に触れる。
「大丈夫…。
湯あたりじゃなくて…、関節の痛みが急に…っ」
「何処が痛い?」
「膝と踝が…。
びっくりさせて、ごめんね…、龍嗣…」
「いや、謝らなくていい。 とりあえず上がろう。」
窓を閉めてから璃音を抱き上げ、脱衣所へと上がる。
大判のバスタオルで璃音を包み、自分にもバスタオルを巻く。
ゆっくりと床に降ろして、璃音の体を拭き、パジャマや下着を渡す。
「ありがと…」
「どう致しまして」
今度は、璃音が棚からパジャマを取って龍嗣に渡した。
「有り難う」
「どういたしまして」
下着をつけ、パジャマを着て、髪をタオルで拭う。
ある程度水分が飛んだ所で、龍嗣が璃音を抱き上げて脱衣所を出た。
「………?」
気遣わしげに璃音を抱いて歩いて来る龍嗣に、瑠維は複雑な気分になる。
『なんで一々抱っこなんだよ…』
内心舌打ちしながらも、敢えて口には出さない。
と、言うより出せなかった。
「ん……ぅ…っ!!」
璃音の軋む背中を摩りながら、龍嗣が冷蔵庫を開けていたからだ。
「…関節痛が始まったんですか?」
「ああ。
いつものよりキツいみたいだ。
カバーや毛布を寄せてくれるか?」
「は…、はい」
弓削が整えたシーツの上に、龍嗣は璃音を横たえる。
「い………っ!!」
体が温まった筈なのに、痛みはギシギシと苛む。
まっすぐな姿勢も取れないまま、璃音は体を丸くする。
「ただの成長痛なんだろ?
なんでこんなに痛がるんだよ…?」
「今は、普通の子供の倍のスピードで伸びているんです。
骨格と筋肉が急激な成長のスピードに追いつけていない部分もありますし、成長が停滞していたのは骨格だけじゃなく、内臓もですからね…」
弓削の視線の先には、痛さに身を捩る璃音がいて、龍嗣が背中や膝などを摩っていた。
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