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水上マテリアルの業務報告を終え、弓削は冷めたミルクティーを一口飲んだ。
「璃音の後を引き継いだ統括も、だいぶやり手のようだな。
よくあれだけの人材がいたものだ」
一息ついた龍嗣が、感嘆している。
「優は璃音様のゼミとも関わりが深かったようですので、勝手知ったるという状態ですね。
初等部に璃音様がいらっしゃった折り、メカ部門の補助を務めていましたし。
『充分に成長するまで、がっつり監督するから安心してくれ』と、かなりノリノリでした」
「忍よりは、ちょっと血が遠い親戚筋だけど、マサチューセッツに行った事もあるから、有能よ。
一度は、宇宙開発事業団にもいたワね…」
「水上の人間は、どれだけの人材を抱えているんだ?」
目の前がチカチカする。
「ピンキリですね。
血の濃さにもよりますが、異能者が出やすい分、身体的・精神的に難のある者も生まれやすいですから。
特に血が濃いのは、瑠維様と璃音様ですが、生まれてきただけでも奇跡と言われた位でした。
瑠維様が倒れたのも、璃音様の成長が遅いのも、濃すぎる血ゆえでしたからね…」
「そういうものなのか?」
「水上夫妻自体も、血の繋った姉妹の子供…従兄妹同士の結婚でしたが、あの家は、従兄妹同士の結婚を三世代以上続けてますからね…。
あまりに濃すぎて、皆が危惧を抱いた程です。
鬼夜叉は一度キレたら止まれませんでしたし、晶様は有能なのに浮世離れしすぎて騙され易い方でした」
明後日の方向を見て、しみじみ呟く。
血の濃さゆえの才覚と難…。
水上の人間には、表裏一体のものが付き纏う。
「璃音様に水上のジジイども、いえ、長老衆が必要以上にこだわるのも、血の濃さと才覚を失うまいという悪あがきですし。
旦那様と引きはがして、適度に血の薄い娘と番いにしようと画策してましたから」
「………そうなのか?」
「ええ。
さりげなく、璃音様のクラスに何名か潜り込ませておりましたし。
璃音様が、全く引っ掛からず、旦那様一筋で靡きもしなかったので諦めたようですけど…」
「………全く気づかなかったぞ…」
「璃音様も気づかなかったようですが…。
あまりの鈍さに、旦那様がかなりきつめの調教をした為の忠犬っぷりなのではと、一時期疑いを持たれてましたね」
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