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それぞれの思いが交錯する内に、学園都市の駐車場についてしまった。
「さ、着きましたよ」
リアシートの二人が我に返る。
「とりあえず、最終日ですから、ボロを出さないように気をつけてくださいね?」
「うん。
ありがとう、弓削さん」
「一応、ワタシがついてってあげるワ。
危なくなったら、猫パンチで正気に戻すワね」
「お願いします。
では、頃合いを見て旦那様方を連れて参りますので、くれぐれも…」
「うん。
気をつけてね、弓削さん。
じゃ、いってきまーす」
猫を伴い、璃音が中等部へと歩いていく。
「んじゃ、俺も璃音のクラスにいれるかどうか、担任に確認しとく。
あぁ、オッサンも暴走しないように言い含めてやったほうがいいんじゃね?」
「考えておきます。
では、璃音様のことを、宜しくお願いいたします」
「おぅ」
「では」
璃音が乗っている時は決してしない急発進で、弓削は飛ばして行った。
「へぇ…、アイツでも取り乱すとあんな顔になるんだな…」
焦った顔は、少しだけ、母の荊櫻に似ていた。
「いらっしゃいませ~」
中等部のカフェテリアを貸し切り、璃音のクラスは「執事メイドカフェ」をしていた。
男子が女装してメイド、女子が男装して執事をしているのだが、小柄な男子数人………璃音、省吾、静馬、周(あまね)の四人と、背の高い女子数人………真秀(まほ)、笑里(えみり)、安曇(あずみ)、鈴音(すずね)の四人が、代わる代わる一般客を案内している。
「次、省吾と鈴音だよ~?」
案内を終えた安曇が、省吾に声をかけた。
「うん。 分かった~」
省吾が一息つき終わり、交代の時間になっても、璃音は客席の方から戻って来ない。
「璃音、まだ給仕してるのかな…」
「うん。もうすぐ義理のお父さんが来るから、それまで頑張るって言ってたよ?
ね、あず?」
「そうそう。
お父さんと回って歩きたいから、今の内だけでも、って…」
笑里と安曇が省吾に説明する。
「でもさ、璃音くん…すっごいあのコスチューム似合ってるよね…」
「似合う似合わないのレベルじゃないよ。
似合いすぎ。
特に、アレつけたから…」
「あー、うんうん。
アレ、似合うもんねぇ…」
女子がささめく。
少女達の視線の先に立つ璃音は、長い黒猫の尻尾をつけていた。
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