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艶やかな黒髪をゆるふわなツインテールに結い、ゴスロリに近い作りのメイド服は、高い襟や半袖に細かくクオリティーの高いレースがふんだんに使われている。
スカートは、幾重にも付けられたペチコートによってフワリと膨らんでいるのだが、不思議な事に膝上15センチ位なのに、違和感も無い。
清楚な白いエプロンにもギャザーを寄せたフリルがつけられて、メイド服の可愛さを倍増させている。
白いニーハイソックスはギャザーを寄せて作ったガーターが取り付けられ、可愛らしさの中に少々危ういイメージも付け加えている。
そのメイドコスチュームに、黒くて長い尻尾がついていて、足元には猫メカの"みあ"が歩いている。
おしとやかな歩き方も手伝い、女の子にしか見えない。
何層にも重ねたペチコートの下にトランクスを穿いているなど、誰も想像もつくまい。
「足音も立てないから、ホントに猫みたいよねぇ…」
「省吾達も似合うけど、一番似合うのは璃音くんだよね…」
ほぅっと溜息をつく少女執事達に気づかず、璃音はかいがいしく給仕に徹していた。
大柄な男子はミニスカートのメイド服は無理だった為、少しレトロなロングスカートのメイド服にしている。
猫の尻尾をつけたミニスカメイドは、比較的小柄な男子達だけだったので、不思議な光景が広がっていたりする。
「では、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ…」
中等部の教師達が座る一角にお菓子やジュースを運び終え、璃音はペコリと一礼して下がった。
厨房に戻る途中、オーダーを取り損ねかけたテーブルに寄り、メニューの確認をしてから一息つく。
『こういう時、弓削さんを思い出すと上手くできるんだよね…。
僕のまわり、お手本になる人ばっかりだから、運が良かったなぁ…』
ニコッと笑い、厨房に入る。
「お疲れ、なんか飲むか?」
厨房にいた瑠維が声をかけた。
「ん…、ミルクティーかな…。
茶葉が濃いめの欲しい」
「了解」
結局、厨房係の一人がへばった為、客席にいた瑠維が厨房に入っていた。
「ごめんね。
せっかくフリーの一日だったのに、こっちの手伝いさせちゃって…」
「気にすんな。
俺が見てらんなくて手を出しただけだから、お前が気にする必要はねぇし」
手前のオーブンでは、リーフパイが焼き上がる寸前だった。
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