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「………?  疲れたのか?璃音」  俯いて、スカートと手だけの視界に、瑠維の顔があった。 「………っ!?  えっ?あっ、あの、ちっ、違っ」  心臓がバクリと跳ね、慌てた拍子に体が傾いだ。  ぱしっ。  璃音の腕を瑠維が掴み、倒れかけた体を支える。 「あ、あり…がと…」 「お前、やっぱり疲れてんじゃねえの?  呼んでもボンヤリして返事しねーし…。  ちょっと座って休んでろ」  厨房の端にあった椅子を持ってきて、璃音を座らせる。 「オッサンが来るまで頑張るっつっても、肝心の回る時に疲れてちゃ意味ねえだろ?  少し座っとけ」  璃音の横の調理台に、ミルクティーとリーフパイを置き、瑠維も暫し休憩する。 「ありがとう…。  いっつも心配かけてごめんね…」  苦笑いする。 「別に、それくらい兄弟なら当たり前だろ?」  ぶっきらぼうな言葉に篭められた感情は、兄弟としてなのか、それとも別のものなのか…?  図りかねて璃音は黙るしかない。 「とりあえず、それ、味見しろよ。  客に出せるかどうかとかあるし」 「あ、うん。いただきます」  少し冷めたパイは、サクリとした歯ざわりで、メープルシロップとバターの香りが鼻に抜けた。 「おいしい…」 「そっか。 ならいいや」  ツインテールのリボンを崩さないように、璃音の頭をやんわりと撫でて、瑠維は離れていった。 『ちょっと、さっきのアレ、見た?』 『見た見たっ。  なんかさ、璃音くんとお兄さん、すんごいイイ雰囲気だったよね!?』 『ぶっきらぼうだけど、さりげなく璃音くんの事気遣ってて…。  やぁん、なんだか変な想像しちゃうじゃなーいっ!!』  ヒソヒソ話す少女達の声は、省吾達にかろうじて届く。 「………女子、怖………っ」  所謂男性同士の恋愛ネタで盛り上がる少女達に、省吾達は正直引いていた。 「確かに、あのお兄さんとのやり取りって、なんかアヤシイ感じはするけど…璃音くんの好きな人って違う気がする…」  腕組みをした安曇が呟いた。  幼い顔立ちをしているが、微かに艶っぽい部分が滲み出ているのを、少女達は敏感に嗅ぎ取っている。  誰かに恋愛感情を抱いているだろうことも。  ただ、漠然とだが、その感情が瑠維ではない誰かに向けられているのだと、安曇は感じていた。

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