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『誰なのかしら…、璃音くんの番いの相手って…』
安曇は素っ気ない表情の下で、思いを巡らせる。
水上本家の命令で璃音と同じクラスに潜り込んだものの、クラスメートの状態から昇格出来ないままでいる。
『璃音が誰かと番いになったらしい』と、両親から聞いてはいるが、一体誰が相手なのかも知らないので、今は傍観をするしかない。
『弓削さん家の忍さんが秘書として入っているけど…あの人が落としたっていう訳でもないようだし…。
誰なのかな…?
他に水上の人で、傍にいる人って…』
チビチビとミルクティーを飲む璃音は、何となくそわそわしていて落ち着かない様子だ。
目を伏せて、何か呟いているようだが、何を言っているのかも解らない。
そんな璃音が、いきなり顔を上げた。
ティーカップを調理台に置き、慌てて厨房から慌てて出ていく。
「「…………?」」
省吾達の前を通り過ぎ、入口の方へ駆けていくようだ。
「「……どうしたんだろ…?」」
カフェテリアの入口に立ち、ドアの向こうをうかがっている。
誰かを見つけたのか、スルリと廊下に出て行った。
「誰か知り合いかな…?」
省吾が入口から廊下を見ていると、璃音が向こう側から来た男性に駆け寄り、勢いよく抱きついた。
「おとうさんっ!!」
好き好きオーラ駄々漏れの璃音に、省吾や安曇、周が、あんぐり口を開けた。
『あの人だ…。
璃音くんの番いの相手って…!!』
安曇は璃音が抱きついた相手…龍嗣を複雑な気持ちで見つめていた。
時間は少し遡る。
「…宜しいですか?
決してエロ魔神モードにだけはならないで下さいね?」
人数が増えた為、小鳥遊のワンボックスカーを借りて運転している弓削が、龍嗣に釘を刺した。
「あ―………、善処する…」
溜息とともにボソリと言い、龍嗣は外の景色を見る。
龍嗣、弓削、依留、白川医師、優、小鳥遊が乗り合わせているのだが、どうにも居心地が悪い。
璃音の後を引き継いだ纐纈優(はなぶさ ゆう)だけは、クスクス笑いながら弓削を窘めた。
「忍、あんまり言ったら、氷室さんも居心地が悪くなるだろうし、楽しみに水を差すから、そこまでにしようよ」
「そうだな…、あんまり絞めすぎると反動が出るし…」
白川医師も同意した。
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