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「んじゃ、俺はここで待ってる。
俺の車のキーは忍が持ってんだろ?」
「ええ。
お借りしますよ、玲。
璃音様、それでは行きましょう」
「はいっ」
弓削と一緒に駆けて行った黒猫メイドの璃音に、その場にいた全員が同じ事を思った。
「「ポケットからお役立ちアイテムって…何処かの青い猫型ロボットか…!?」」と…。
「璃音様、失礼いたします」
中等部の玄関を出た所で、弓削が璃音を抱き上げた。
「え、ええ………っ?」
「飛ばします。しっかり掴まっていて下さい」
「は、はいっ!!」
素直にしがみつくと、弓削の腕に力が篭り全速力で駆け出した。
璃音を抱いているにもかかわらず、スピードが落ちるそぶりもない。
息を乱すことなく車に辿りつき、璃音を助手席に座らせる。
二人とも直ぐにシートベルトをし、車がスタートした。
車は最短距離で駐車場を抜ける。
地下バイパスから市街地に出、渋滞を避けてスムーズに住宅街へ滑り込んだ。
「弓削さん…?」
「はい」
「自分では核心がないんだけど…。
僕…、龍嗣の事を伴侶って決めてしまった…かも…」
助手席に座った璃音は、小さく呟いた。
「…気付かれたきっかけをお聞きしても宜しいですか?」
「はい…。
最近、弓削さんの香りが分からなくなったし、今日も…」
「………」
「玲や依留さん、優さんの香りも分からなかった。
指が触れても、体がザワつかなくなったし…。
それなのに、龍嗣の香りだけが甘く誘うみたいで、どうにもストッパーが利かないから…。
だから、もしかしてそうなのかなって…」
「そうですね。
璃音様が旦那様から婚約指輪を贈られた後でしょうか…。
私も璃音様の香りが分からなくなりました。
さりげなく璃音様が悦ぶ場所に私が触れても、全然反応をされなくなりましたので、多分そうなのではないかと思っておりましたが…」
淡々と答える弓削に、璃音が切なそうな顔になった。
「ごめんなさい…僕…」
「大丈夫ですよ?
総一達も、もうそれぞれ番いの相手を探していますから…」
「僕が聞ける立場じゃないけど、弓削さんと玲はこれからどうするの?
禁断症状出てないんですか…?」
六人の内で、璃音に対して最も執着が深い二人だったから、璃音は気になっていたのだ。
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