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「玲も、今日の璃音様の様子を見て完全に伴侶を固めたと確認したので、改めて番い候補を探すそうです。
私も、いずれお見合いでもしようかと…」
「お見合い…?」
「はい。
璃音様のように、素直で純粋で、可愛らしくて鳴かせがいのある相手を選ぼうと思います」
「………鳴かせるの…?…弓削さんが…?」
「はい。
璃音様が可愛らしく鳴くように、心も体も、魂まで搦め捕って鳴かせたくなる相手を探します。
それに…元々、私達に分が悪い賭けだったのですから、あまりお気になさらないで下さい」
「でも…」
「気にするなと言われても、気になってしまいますか…?」
「はい…」
助手席で恐縮している璃音は、下を向いた。
「あんまり健気で可愛いいと、本当に押し倒して襲いたくなりますから、気にするのはそこまでに…」
「弓削さん、龍嗣みたいな事言ってるし…」
「旦那様のエロ魔神が感染したかも知れませんね」
「ふふ…っ」
「ふふふっ」
お互い、自嘲めいた笑いが零れる。
「もしもの保険だったとしても、番い候補として関われただけで僥倖でしたよ?
ましてや、禁断症状を抑えるために、ハグやキスをして頂きましたし」
「………」
「かなりの役得でしたよ。
全身の血液が沸騰しそうな程に…」
「………」
「全くのお預けで振られた訳ではないんです。
だから、一種のギブ・アンド・テイクとお考え下さい」
氷室邸のガレージに車を横付けし、弓削はフワリと笑った。
今ひとつ釈然とできない璃音は、表情が曇ったままだ。
弓削は、その璃音の顎を掴んで上向かせ、シートを倒した。
「え………?」
チュ………ッ。
強引に璃音の唇を奪う。
「ん………っ!!」
柔らかな唇をこじ開けて、小さな舌を搦め捕る。
以前は、弓削の舌が絡まると逆らえなかった璃音の舌は、熱くもなく蕩けもしない。
ただ………甘かった。
「んん………っ」
存分に璃音の唇と舌を味わい、弓削の唇が離れていく。
「……っふ…ぅ」
乱れた息を整えるだけで、璃音は精一杯で…。
悪戯っぽい笑みを浮かべ、弓削はもう一度、軽く唇を啄む。
ありったけの想いが篭もった口づけに、璃音は涙をポロポロ零した。
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