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チュ…ッ。
はらはら零れる涙を、弓削が吸い取っていく。
チュ、チュ…ッ。
「ん………っ、うぅ…っ」
「やはり、私のキスは嫌ですか…?」
「違…っ」
更に涙がはらはら零れる。
「弓削さんに応えられなくなったのに、いっぱい想いが篭められたキスだったから…。
僕が…、僕が龍嗣を選んだから…っ」
最愛の相手への、ありったけの愛を篭めた口づけをくれた弓削に、何一つ返せないままで身勝手に振ってしまった自分が、許せなかった。
「僕が流されてばっかりだから…っ、龍嗣に逆らえないまんまで…っ、僕…、僕は…っ、あ…っ、あぁ…っ!!」
弾けた想いは止まらない。
口から漏れるのは、情けない言葉と吃逆と…そして嗚咽だ。
「僕…っ、僕なんか…っ!!」
「ご自分を責めるのはおやめなさい」
しなやかな体が、璃音の体を抱きしめる。
「なんで…っ、僕、僕なんかに、なんでそんなに…っ、尽くしてくれるの…っ?
そんな価値、僕にはないのに…っ!!」
「あります」
「ないよ…っ、そんなの、ない…っ!!」
「あるじゃないですか」
「ないよぉ…っ!!
体小さいし、皆のお荷物だし、なのに、人に尽くさせてばっかりの、手のかかるだけの…っ」
「おやめなさい」
きつく抱きしめる。
「馬鹿っ!! 弓削さんの馬鹿馬鹿ーっ!!
僕みたいな役立たずな子供にっ、僕なんかに…っ、僕なんかに…っ!!」
弓削の胸を、ばしばし叩く。
「龍嗣の代わりに会社回しちゃうくらいの人なのに、僕を一番大事にするなんて、それで、自分の命まで削っちゃうなんて、弓削さんの馬鹿…っ、馬鹿あっ!!」
僕ガ居ナカッタラ、ミンナ、振リ回サレズニ済ンダノニ…!!
嗚咽は、慟哭に変わる。
「璃音様…っ!!」
「僕に尽くす価値なんか、なんにもないんだよ!?
なんで、なんで…っ!!」
尚も胸を叩き続ける璃音を、更にきつく抱きしめる弓削。
「あなたに尽くす価値は、沢山あります」
「あるわけないよぉ…っ」
「あるでしょう?
健気で、素直で、純真無垢で、可愛らしいじゃないですか。
お兄さんを守りながら、お父さんが作った4000億の借金まで返済して、会社も切り盛りしたでしょう?
それは14歳の子供には、普通出来ない事ですよ?」
ゆっくり噛み砕くように囁く。
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