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「弓削さんや…皆が僕を許しても、僕は僕を許せない…」 「何とも強情ですねぇ…」  困ったようにため息をつき、弓削は璃音の背中を何度も摩る。 「大体、私は最初に申し上げたでしょう?  複数の恋愛事を一度に出来る程あなたは器用ではないのだから、旦那様との事を優先するべきだと」 「………っ」 「旦那様があなたを手酷く裏切るか、あなたが旦那様を棄てるかしたなら、私達は動くと。  水上の本家の者も、私達六人も、あなたが旦那様を篭絡するなど出来ないと思っていたんです。  幼いからと、あなたを侮っていた…。  それが、たった数日で落としたのも想定外なら、完全に篭絡したのも想定外だったんです」  璃音自身も無理だと思っていたのだから、周囲の大人が思うのも無理は無い。  母でさえ、璃音には無理だと踏んでいた。  だからこそ、保険として六人を選んだのだから…。 「真っ向から向かい合い、真摯に愛を告げたとしても、子供の戯れ事として片付けられるだろうと思っていたんです。  あなたの幼さや、可愛らしさ、純真、無垢、無邪気…、私達が絶対に無理だと思っていた要素が、旦那様を煽った。  愛人から恋人になり、生涯ただ一人だけの伴侶と認めさせた…。  その奇跡とも言える事を成し遂げたのに、"何も持っていない"等と思うべきではありません。  それは、謙遜などではなく、自分を卑下しているだけですからね?」  璃音を抱き起こし、やんわりと腕で包み込む。 「僕は、何もしてない…。  ただ、龍嗣に抱かれて流されてただけかも知れないのに?」 「何を以って基準にするかは人それぞれですが。  私から見た感じですけれど、普段の天然で幼い言動と、旦那様に抱かれて情欲に染まった時のアンバランスさが堪らないようですね」 「………?」 「旦那様の腕の中にいる璃音様は、健気で可愛らしいのに、蕩けて艶っぽくなりますから。  書斎で鳴かされていた時の姿態も、ゾクリとする程に美しいと思いました。  あんなに可愛らしくて淫らなら、際限無く抱きまくってしまう旦那様のお気持ちもわかる気がしましたからね」  龍嗣に跨がって突き上げられていたあの時の事を…、思い出したら、顔から火が出そうになる。 「や……っ、やだ…」  あられもない姿を弓削に見られたのだと、今更ながら赤面する璃音なのだった。

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