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愛しい獣

 求愛者達が不毛な会話をしている頃………。  白川医師はメカ猫の"みあ"と、学園祭を見学していた。  中等部はあらかた見終わったので、大学部へと移動する。  璃音が開発した新型ロケットエンジンと、地雷撤去メカなどの展示をしているからだ。  璃音の成長を阻む程に、頭脳を使うに至った研究が如何なるものなのか、白川は見たことが無かったし、一度しっかり見ておきたいと思っていたからでもある。  猫に案内してもらい、大学部のエントランスに足を向ける。 「そんなに気になるの?  璃音の作ったのは、あくまで試作品なのに」  猫は、不思議そうな顔をした。 「そりゃあ、気になるだろう?  あんなふうに成長が止まるなんて、どれだけの頭脳を使えばそうなるのか、主治医としては気にならない筈がない。  たった六歳で君を作ったのだって、考えられない位なのに」 「そうなの…?  あの子は、多分、普通の玩具で遊んでいるのと同じような感覚の筈よ?  頭を使ったのは、氷室重工の製造ラインにはまるようにって、部品を調整するのに手こずったのと…。  特許の書類を作るのに手間取っただけだワよ?」 「普通の子供は、特許の書類は書かないだろうに」  肩に乗った猫の背中を撫でてやり、白川はため息をつく。  猫は「何でもないじゃないの」と言いたげだが、国家機密まみれの研究をしたり、書類まで揃えていた子供の事を考えると、暗澹たる気持ちになる。  子供なのに、子供である事を許されないなど、医師としても、一児の父としても納得できないのだ。  ましてや璃音は、龍嗣と肉体関係まであるというのに…。 「璃音は、ずっと大人でいなきゃならない訳じゃないワよ?  少なくとも、あのエロ魔神には甘えまくっているし」 「甘えるのと、恋愛感情は別だと思うんだが…」  頭痛がしてきた白川医師。  片手で額を押さえ、フェンスに寄り掛かる。  痛みをやり過ごしていると、その手に小さくて肌触りの良い手が触れた。 「………?」 「先生、頭痛いの?」  一生懸命伸び上がり、顔を覗き込んだのは、今しがた話題に上っていた璃音だった。 「………?」  何故だ?  確か中等部の入口で、別々の方向へ歩いた筈だ。 『龍嗣とデート!!』と、ウキウキしながら出掛けた筈の璃音が、何故目の前にいる!?  白川医師は、思考がフリーズした。 「どうした?いきなり走り出すから、ビックリするじゃないか…」  遅れて、息を切らせた龍嗣が駆け寄る。

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