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「私"も"…?」  千尋と呼ばれた少女は、首を傾げた。  肩のラインで切り揃えた髪が、サラリと揺れる。 「君の目の前にいる子も、同じ事をして此処に来たんだ。  まったく…。水上の家の血を引く子供というのは、皆こんなに無茶をするのか…?」  苦々しい顔をする白川を、璃音と千尋が不思議そうな顔をして見ている。 「だって」 「ねえ…?」 「「一番手っ取り早いコースだったから…」」  璃音と千尋、二人の声が、絶妙にハモった。 「「それを見せられる、こっちの心臓がもたないだろ?」」  今度は、龍嗣と鷹也の声がハモる。 「君たちは、身軽だから大丈夫だと思っているだろうが、周りには心配をかけてることも多い。  それは理解しなきゃいけないよ?」  白川が、さりげなく跡を引き継ぎ二人を叱り、 「「はーい……」」 『仕方ないなぁ』とでも言うように、璃音と千尋が頷いた。  立ち話も何なので、大学部の研究棟…璃音の部屋に五人と一匹は移動した。  璃音は、濃いめの茶葉を使ってミルクティーを煎れ、全員に配る。  勿論、猫にも。 「じゃあ、千尋さんは白川先生の養女…なんですか…」  龍嗣が目をパチクリさせた。 「ええ。  私の母が、この子の婆やをしていた縁で…」 「いやぁ、可愛らしいお嬢さんですね。  小学生ですか?」 「18歳よ?見えないかもしれないけど」  にっこり笑って龍嗣が聞くと、千尋がざっくり撫で斬りにする。 「は……、はい?」  ソファにチョコンとすわる少女は、璃音と比べると同じ位の年回りに見える。  そう。  10歳位にしか見えないのだ。 「そう見えても仕方ない。  病気や栄養失調の影響でね、体が小さいままなんだ。  だから、璃音くんの成長についても煩いんだよ。私は」  複雑な顔の白川医師と千尋を、璃音はそっと見比べる。 「私は、小回りが利くから楽なんだと、毎回言ってるでしょう?  服の買い替えも少ないから、経済的だし」 「それ、判る…。  服とかをちょくちょく選ぶのって面倒だから、去年の服を着回したいし。  そっちに手が掛からない分、好きな物とか趣味にお小遣いを回したいって、僕も思うもの」 「あら、気が合うわね…」 「ホントだ…。気が合うね」  千尋がニヤリと笑い、璃音はフワリと笑った。

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