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並んで座った璃音と千尋は、どちらも機嫌が良さそうだ。
気の合う女友達のような雰囲気で、ニコニコしている。
「二人とも、お小遣いのレベルじゃないだろう…?」
白川が苦笑いする。
「そうねぇ。
璃音は発明したり特許を転がしてるし、千尋は株やお金を転がすのが上手だって、荊櫻が言ってたワね…」
鷹也の膝の上で人間のように座り、猫が白川に同意した。
「株やお金を転がす…?」
「氷室さん、千尋は株で利益を上げるのが上手なんですよ」
怪訝そうにしている龍嗣に、猫を撫でながら鷹也が説明する。
「何といいますか、価値が跳ね上がる株を見分けるのが得意でしてね…。
ああ、氷室さんの会社の株でも、かなり…」
「………」
「水上物産も、マテリアルになったあと、株を分割したでしょう?
それも千尋が当ててましたね…億単位で…」
背中を冷たい汗が滑り落ちる。
株の売買でそれだけの利益を得つづける事は容易ではない。
ましてや、子供には無理な事の筈。
「千尋は本が大好きでしてね、内容によっては、どんなに高額でも買おうとします。
海外の本も、原書でがんがん取り寄せる。
そんな知識欲の固まりなので、株で儲けても、かなり浪費してるんです。
本がありすぎて、部屋の床が抜けそうになってもね」
「凄い…。
いいなあ。 僕も読んでみたい」
瞳をキラキラさせて、璃音がうっとりしている。
「お好みの本があったら、貸してあげましょうか?」
「いいのっ!? ホントに…っ!?」
まるで双子の姉妹のように、キャピキャピしている千尋と璃音。
「私は大学の法学部にいるから、リストを後で届けるわね。
学内ネットのアドレス交換もしておきましょ?」
「うん。ありがとうっ、凄く嬉しい…!!」
「私もお願いしたい事があるから、後で相談しましょうね?」
「うんっ。
あのね、千尋さんは、こういうの、好き?」
ポケットに入れていた反重力チップを出し、サイドボードを持ち上げたり、棚の上にいたメカなどを千尋に見せている。
素直に喜んでいる璃音と、何か腹に一物持っていそうな千尋。
無邪気な黒猫と、腹黒い使い魔じみた黒猫のようで、見た目が似ているが、中身が全く正反対のように見えなくもない。
大人三人は、複雑な思いで二人を見つめていた。
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