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「マム、今日は、どっちで遊びたい?
土の上と無重力、どっちがいいかな…?」
「ドッチにシヨウカナ…」
「土の上モイイケド」
「無重力もイイヨネ?」
きゃわきゃわと喜ぶ蜘蛛達。
「両方アソビタイ…」
「ワタシモ、両方アソビタ~イ!!」
「両方遊びたいの?マム達は欲張りだねぇ」
「女の子は、欲張リなのが当タリ前ナノ!!」
蜘蛛達を撫でてやり、璃音は軽くため息をついた。
「実験棟の許可が出たらだよ?」
「「ハ~イ」」
嬉しそうにしがみつく蜘蛛達を頭の上や肩に乗せ、璃音は実験棟へ龍嗣達を案内することにした。
以前、龍嗣と弓削が入ったフロアではなく、高さが20メートル程でドーナツ状になっている。
真ん中の部分が制御室になっており、実験フィールドと隔てるガラスは、水族館の大水槽並の厚さだ。
璃音はコントロールパネルを操作し、調整しながら起動していく。
そこに、璃音を担当している教授が入って来た。
40代の、スラリとした男性で、サラサラの黒髪は、つむじの所が跳ねている。「あ、みない先生」
「こんにちは。
マム達を遊ばせるんだって?」
「はい。
擬似無重力にしてもいいですか?」
「いいよ。
…と、言うより、これ自体君が作った施設だから、私の了解は要らないだろう?」
「だって、電気代は大学持ちでしょう?」
「それも、全天候型の自家発電施設で間に合うから気にしなくていいよ。
今日は、"おとうさん"や、法学部の爆弾娘もいるから、好きなだけ遊んでいい」
「え!?いいのっ!?」
「ああ。
私は後ろにいるから、無重力でも水中でも、遊び放題していいよ」
ニコニコしながら、教授は龍嗣達が立っている方へ下がった。
「どうも、いつもお世話になっております。
璃音くんの担当をさせて頂いております、薬袋(みない)と申します」
「あ…、どうも、氷室です。
すみません、ご挨拶がおそくなりまして…」
「いえいえ
そうか…、貴方が甥っ子の番いの相手か…」
「…………は?」
龍嗣の目が点になる。
「い、いま何とおっしゃいました…!?」
「貴方が甥っ子の番いなんですね、と。
私の一番下の妹が、あれの母親ですから」
にっこり笑った顔は、確かに璃音と荊櫻、両方に似ている。
龍嗣の背中は、冷や汗が滑り落ちていた。
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