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「スタンバイ、できたよ~」
璃音がニコニコしながら振り向いた。
ドーナツ状のフィールドには人工衛星が数機浮かび、大小のチリも浮遊している。
「マム、いける?」
「「ダイジョウブ!!」」
搬入ハッチから6匹の蜘蛛がフィールドへ入った。
フワフワと漂い、六角形に陣取る。
「璃音、スタンバイ完了シタヨ」
窓の外では、蜘蛛達が足を震わせたり、目を点滅させたりしている。
「じゃあ、始めるね?
スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去実験、開始します」
無重力のフィールドに、高速の風が吹きはじめた。
「マム達、怪我しないでね?」
「「ウン!!」」
張り切る蜘蛛達が、互いに糸を張り、六角形の巣が出来上がった。
それぞれが調整し合いながら、人工衛星の手前に陣取っていると、大人の拳二つ分の金属片が飛んで来る。
パシュ!!
網に、金属片が捕らえられた。
パシュ!!
パシュッ!!
パシュ!!
次々網にかかる金属片は、糸が自然に伸びてグルグルと巻き付き、固定されている。
今度は大きい機械片が流れて来て、衛星に直撃しそうになった。
「マム、大きいから気をつけて」
「「ダイジョウブ!!」」
直径50センチはある塊が、回転しながら蜘蛛達に近づいている。
六角形の陣形そのままで、蜘蛛達は機械片を網で受け止め、衝撃を相殺した。
「…あの網…、かなり丈夫なんだね…」
鷹也が感嘆の声を漏らす。
「蜘蛛の糸は、結構丈夫なんです。
人間と同じ大きさであれば、鋼鉄のワイヤー並の強度があると言われています。
あのマム達の糸も、普通の蜘蛛の糸をモデルにしてますが、伸縮性もあるし、強度を持たせてもいます。
そうだね?璃音」
「はい、先生」
蜘蛛達は、受け止めた機械片を網そのものでグルグル巻き取り、衛星の搬入口に押し込んだ。
「璃音、今度ハ追尾モードデモイイ?」
「いいよ~」
「「ヤッター!!」」
先程六角形に陣取っていた蜘蛛達は、風に乗って流れにまかせ始める。
「風ニ乗ルノ、楽シイネ」
「気持チイイヨネ」
ぐんぐんスピードがあがり、高速で流れる金属片と速度を合わせ、蜘蛛は並走した。
その後ろにもう一匹の蜘蛛がついており、二匹でタイミングを計っている。
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