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「ねぇ、璃音、これは何に使うの?」  龍嗣にペッタリと張り付く璃音に、千尋が気になる物を差し出した。  小振りな拳銃にも見える。 「それね、コンビニ強盗をマーキングするの」 「強盗を…マーキング?」 「うん。  コンビニ強盗だと、カラーボールを投げるでしょう?  でも、当たらない事も多いから、これで撃つの」 「…?」  璃音は、中に入っていた薬莢を一つ取り出し、キャップを開けた。 「中にはね、マムを小型化した蜘蛛形のメカが入っていて、犯人に張り付くの。  で、犯人から見えない所にしがみついて、電波を発信し続ける。  上着を脱いだりしても、ターゲットを補足できるから、絶対犯人から離れない。」 「要は、発信機なのね?」 「うん。  それとね、この銃身を追加してつけると…。  龍嗣、実験台になってくれる?」 「ああ。」  龍嗣から少し離れた所に移動し、璃音は龍嗣に向けて撃つ。  パシュウッ!!  飛び出したのは、蜘蛛形の発信機ではなく、ネットだった。 「お、おいっ!!」  ネットはフワリと広がり、長身の龍嗣を包み込む。 「ごめん、龍嗣、もう少し我慢してね?」  銃に付いていたスイッチを押すと、龍嗣が床に倒れた。 「ぬあっ!! なんだこれっ、重いぞっ!!」  床に突っ伏し、苦悶の表情になる。 「璃音、何をしたの?」 「反重力チップと反対でね、重力が倍になってくの。  犯人が刃物を持ってたら、ネットを破って逃げたりする事もあるから、重さを増やして動けなくするんだよ~」  スイッチを切り、龍嗣からネットを外す。 「ごめんね、重かった?」 「ああ…。  重量級の人間二人にのしかかられたようだったぞ」 「ごめんなさい…」  龍嗣の頬に口づけ、璃音は空の薬莢をネットに向けた。 「「え………?」」  ネットがスルスルと薬莢に吸い込まれていく。  器用に折り畳まれ、全部が収まると、薬莢の蓋が閉まった。 「薬莢もネットも、さっきのミニマムも、全部再利用出来るんだ…。  ネットも、銃身の角度を変えると、スタンガンみたいにビリビリするのとか、眠くなったりするのとか出来る。」 「………凄いわ…。  私、こういうの欲しい…」  うっとりとした表情で、千尋が呟く。 「欲しいの?」 「ええ。  私、4月から警察官になるから…」

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