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「…千尋さん、女性警察官になるの?」 「う…ん、特例なんだけど、国家公務員Ⅰ種のキャリア扱い。  一旦警察庁に行ってから研修に入るの…」 「そうなんだ…。  でも、特例って?」 「私、海外の大学を卒業していて、学位とか取ってたのよ。  それと、射撃が得意な方だからかな…」  何となく、含みがある言い方だったのだが、璃音は敢えて受け流した。 「もしかして、璃音も幹部候補に上げられてるの?」 「ううん。  科捜研用の機材を時々設計させて貰ってるだけ」  複雑そうな顔をしている璃音の頭を、龍嗣が優しく撫でる。 「どうした?  千尋さんが心配なのか?」 「うん…。  女の子なのに、怪我とかしたらやだな…とか思うから」 「私は大丈夫。  結構逃げるのが上手だし、すばしっこいのよ?  それに、多分危険な部署には配属されないと思うし」 「そうなの?」 「最初は、鷹也さんのチームに回される予定だから、射撃や体術の訓練の方がメインみたい。  見た目が子供だから、配属出来る部署を捜すのだけでも無理があるだろうけど」  少し複雑な顔をしている千尋の言葉を、鷹也が引き継ぐ。 「ちょっと事情があってね、身辺警護が必要な部分があるから。  でも、射撃の腕も格闘術も千尋はかなりハイレベルなんだ。  だから、身辺警護の必要性が無くなれば、他のキャリアと同じ研修に回される筈だよ」 「千尋さん、警護対象なの?」 「んー…、まだ確定じゃないの。  "向こう"の事情というか…、了承次第…かしら」  濁すということは、あまり掘り下げない方が良いのだなと璃音は判断し、敢えて追求はしなかった。 「そういえば、前に、白川先生が漏らしてらしたが、アメリカの海兵隊でシールズ隊員を全員ボコボコにしたとか」 「お父さん、あんまりそういう事は人様に言わないで下さい。  それでなくても、怪力娘だの鉄面皮だの、患者さん達に散々言われてるんですから」  千尋の頬が膨らむ。  どう見ても、18歳の女性には見えない。  璃音と同じ、10歳そこそこの子供が拗ねているようだ。 「いや、すまん。  どうも千尋と璃音くんは雰囲気が似ているから、つい…ね」 「「似てる?」」  璃音と千尋が首を傾げる。 「顔つきじゃなく、雰囲気がね。  人馴れしてない黒猫の子供みたいな所かな」

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