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 後夜祭の時間になった。 「この部屋の窓からね、綺麗に見えるんだよ。  ちょっと暗くするね?」  璃音が室内の照明を落とし、窓のブラインドを全て上げた。  既に外は暗くなっており、緑地公園の辺りで、ライトが動いていて、何か準備をしているようだ。  と…。  小さな光が幾つか空に向かって飛び、夜空に光の大輪の花が咲く。 「わあ、綺麗…っ!!」 「凄いな…、緑地公園の池にも映ってる」 「学園の中で、この建物から見る花火が一番綺麗なんだよ」  色とりどりの花火が学園都市を照らし出し、初冬の空に花を咲かせた。 「………?」  温かな感触に視線を落とすと、龍嗣の手に璃音の手が重ねられている。 『暗くて見えないから、いいよね?』  小さな声で囁き、ニコッと笑う。  この一年で、すっかり馴染んだ肌触りに、ざわつく気持ちが凪いでいく。 『大好き』という気持ちが伝わってきて、璃音の手が触れた所から暖かさが広がる。  それが、とても嬉しくて仕方ないと思う。  パソコンデスクに座り、璃音を膝に乗せても、皆、花火に見入っていて気づかない。  次々上がる花火は、夏と違う澄んで凍てつく空気の中で見事な花を咲かせている。  冬の花火は殊に美しいのだなと、うっとり見入る千尋や鷹也。 「綺麗だね、龍嗣…」  微笑んで龍嗣を見上げてくる璃音の顔が、花火の光に照らされて綺麗だと思う。  龍嗣の耳に口を近づけ、璃音がそっと囁いた。 「龍嗣、花火に照らされて綺麗…」  うっとりとした表情をする璃音を抱きしめ、額と額を擦り合わせる。 「璃音は、女の子の格好をしてるから、何だか夢の中の住民みたいだ…。  特に、青い光のときは綺麗だぞ?」  お互いにクスクス笑い、額と額を合わせていると、一際大きな花火が上がった。  夢の残像のように、ヒラヒラと舞い落ちる火花。  冷えた空気に溶け込むように消えて行き、何となく切ない気分にさせた。 「あっ、俺達の視線が外に向いてるのをいいことに、バカップルみてえな真似してんじゃねえよ!!」  瑠維が璃音を引っぺがそうとするのだが、見兼ねた弓削が瑠維をグイグイと引きずり、璃音と離す。 「あんまり邪魔をしていると、いずれ馬に蹴られますよ?」  ニヤリと笑い、小鳥遊や瑠維を有無も言わさずに引きずり、弓削はサカサカと研究室から出て行った。

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