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2頭の獣を撫でていると、龍嗣の携帯が鳴った。
弓削からのメールで、依留や小鳥遊達を先に送ってくるという内容だった。
添付ファイルには、小鳥遊に押さえ込まれた瑠維が不本意そうな顔をしている写真で………それを覗き見た璃音も鈴を転がしたような声で笑う。
「車が出てしまったから、暫く此処にいてもいいようだな」
「じゃあ、明かりつけるね」
リモコンを押すと、程よい明かりがつく。
窓も、一カ所だけ残してスルスルとブラインドが降りた。
「見て…緑地公園の所」
璃音の視線の先…緑地公園を見ると、ブルーを基調にしたイルミネーションが瞬いている。
星のようにチカチカしたり、紋様を描くように灯ったり…白い大きめのものは雪の結晶のようだ。
「綺麗だな…」
暫しイルミネーションに見入っていると、璃音が小さくクシャミをした。
「寒いか?」
龍嗣が璃音にかけようと、コートを脱ぎかける。
「龍嗣がこうしてくれたら平気」
コートを脱ごうとするのを止め、そうっと懐に体を擦り寄せた。
「一緒にくるまってれば、一番あったかいよね?」
しなやかな腕が、コートの下を通って龍嗣の背中に回される。
「そうだな。
こうしてると凄く温かい」
少女の格好のままの璃音を抱きしめるのは、なんだか少し違和感がある。
だが。
着衣の袷から立ち上る芳香は、間違いなく璃音の肌から香るもの。
甘く、蠱惑的で、誘うよう。
なのに、全くきつくなく、しつこくもない、極上の媚香。
「龍嗣…?」
「ん?」
「龍嗣、いま、えっちい気持ち…?」
「……なんでだ?」
「だって、龍嗣から甘い香りがするもん。
僕の事、いっぱい気持ち良くしてくれる時の…」
見上げてくる顔は、頬が紅潮して目が潤み、うっとりとした表情を浮かべている。
「やらしい香りって、なんなんだ?」
可笑しくて笑うと、至極真面目な顔で璃音が返す。
「あのね、成熟した男の人の香りって感じなんだけど…、いかにも下品な感じとかじゃなくてね?
なんていうのかな…、絶対的な安心感を齎してくれる。
凄く甘くて、華やかで…でもきつくない。
なのに、僕の躯も心もズクズクに蕩けさせる…、そんな香り」
ほぅっと息をつき、自身を包む香りに酔いしれている。
まるで、木天蓼に酔う子猫のように。
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