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「あらら…泣かせちゃったねぇ…」
瑠維の後ろから画面を覗き込んでいた優が眉をひそめた。
「やあん、璃音くんったら泣き顔まで可愛い過ぎよ…っ」
ボロボロ泣く璃音に萌えを刺激されたようで、依留は胸元を手で押さえて堪えている。
その様子を聞いていた小鳥遊に至っては、一ヶ月ほど前に璃音をつまみ食いした折りの事を思い出し、鼻血を噴いた。
「なっ、何を想像してるんですっ!!
早く栓をしなさい、玲っ!!」
「ふぁっ、やべぇっ!!」
半ばパニック状態の車内の様子に、龍嗣も苦笑いするしかない。
『瑠維はいつだって僕の事信じてくれてるって…、ずっと味方だって信じてたのにぃ…っ』
ぼろぼろ泣きの顔は、小動物っ気全開で、しかも、黒猫メイドのコスプレのままの璃音は、どう見ても女の子にしか見えない。
「う………っ」
潤んだ目から大粒の涙を次々零す璃音の表情に、免疫があるはずの瑠維も心臓がバクバクし始める。
『じゃあいいよっ!!
今から龍嗣と家に歩いて帰るから。
でも、地下鉄も止まってるし結構距離があるから、1時間や2時間じゃ着かないからね?
そこ、ちゃんと覚えておいてよ!!
それに、僕、ミニスカートとハイソックスだから、足元スカスカしちゃってるし、きっと凍えちゃうんだからっ!!』
『何っ!?
今から屋敷までか!? 璃音、風邪をひくだろ!!』
『だって、じゃあどうすればいいワケ?
道路は詰まってるし、電車もダメ、ここに泊まるのもダメ。
そしたら、家まで歩くしか無いでしょ?』
ぼろぼろ泣き続ける璃音と、意地を張る瑠維。
電話を挟んでどちらが折れるのか、龍嗣も弓削達も見守るしかない。
と、いうより、如何に璃音が瑠維を落とすかなのだ。
『いいよもうっ。
何時間かかったって家まで歩く。
足がスカスカしたっていいもん。
酷い風邪引いて成長止まったって、僕知らないもん!!』
『こら、捨て鉢になるんじゃない。
どう見たって、外は氷点下なんだぞ?
この薄着でうろついてたら、風邪どころか肺炎になりかねないだろう?』
ぼろぼろ泣きの璃音と、宥める龍嗣。
電話のこちら側は、いたたまれないでいる瑠維。
『勝負あったな』と、弓削は読んだ。
「潮時でしょうね…」
一人ごちてシートベルトを外し、ワンボックスカーの中、助手席から瑠維の隣へ移動した。
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