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「う…、ふ……ぅ」
龍嗣は起き上がり、璃音の頬に飛んだ白蜜を拭った。
その龍嗣の手を取り、拭い取った蜜を璃音がチュルッと舐め取る。
長い指を小さな舌がチロチロと掠めていった時、背筋にゾクゾクと甘い痺れが広がった。
「………き…て」
小さな囁きが、龍嗣を誘う。
いつもと違うツインテールにメイド服、ガーター付きのハイソックス姿の璃音は、肌の色もあってビスクドールのようにも見える。
肌理の細かい白磁の肌がほんのり淡く色づき、スカートから伸びる足も無粋な毛がないので、少女にしか見えない。
元々、子供が好みの範疇でなかった自分が、こうも一人に囚われてしまうなど、一年前は思いもしなかった。
親友の忘れ形見としても、早々に壊れてしまう筈だった愛人契約。
それを一晩で覆し、恋人から伴侶になるなど、誰が思いつく?
「璃音…」
「ん……?」
力無く横たわる璃音の額に、熱を帯びた額を重ねる。
「晴れてお許しも出た事だし、君を食べていいだろうか…?」
「うん…。食べて…。龍嗣に美味しく食べられたい…」
「なるべく自重するが、箍が外れてがっついても、許してくれるかい?」
「ん……。
多分、大丈夫…。 それに…」
「それに?」
「龍嗣にがっつかれるの、イヤじゃないから…」
チロと、小さく舌を出して苦笑いする璃音の表情が、可愛らしいものからなまめかしいものへと変わっていく。
軽く唇を啄み、ほっそりとした首筋に口づけを落とすと、熱い吐息に混じって甘やかな言葉が紡がれる。
「龍嗣が焦れ焦れしてたのと同じ位、僕も焦れ焦れしてたんだもん。
大好きな人にがっつかれて、嬉しくない筈ないでしょ…?」
「こら、あんまり嬉しい事を言うんじゃない。
ホントに歯止めが利かなくなってしまうだろ?」
「龍嗣にだったら、何されてもいいもん…」
広い背中に腕を回し、璃音は龍嗣の唇を啄む。
「………ここまで天然の誘い受けというのも困りものだな…」
「……へ?」
「いや、なんでもない」
聞き取れなかったらしい璃音を上手くごまかし、龍嗣は花びらのような唇を啄んだ。
「璃音?」
「なあに…?」
「さっきの事みたいな言葉を、他の人に言ったり…するなよ…?」
「………?」
璃音は不思議な顔をして首を傾げていた。
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