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チュ…ッ
甘やかに唇が重なる。
軽く啄むだけで璃音の息は簡単に乱れてしまうというのに、龍嗣は胸の蕾まで摘んで責めてきた。
「んっ、んん…っ、あふ…」
力が抜けていく。
チュ、チュ…ッ。
ほんの少し開いた唇を割り、龍嗣の熱い舌が侵入してくる。
『気持ちいい…。
駄目…、龍嗣のキス、頭の中が溶けちゃうよぅ…』
抗えないままで受け入れていると、龍嗣の携帯電話が震え始めた。
無視したまま放っておくと、一度着信が途絶えた。
すると、今度は璃音の携帯電話が震え始める。
「電話ダヨ、弓削サンカラ電話ダヨ♪」
仕方なく唇を離した龍嗣は、舌打ちをした後に通話釦を押した。
「…なんだ?」
『おはようございます、旦那様。
電話にお出になりませんでしたので、璃音様の方にかけさせて頂きました。
昨夜は、ご不便をおかけしまして…』
不機嫌極まりない龍嗣の声を敢えて気づかない振りをして、弓削は続ける。
『市内の停電もあらかた復旧いたしましたし、幹線道路も閉鎖が解かれ始めておりますので、お迎えに上がろうかと思いますが、宜しゅうございますか?』
「…嫌だと言っても来るんだろう?」
『それはそうです。
二人っきりのままにしておいたら、旦那様が野獣になったままでございましょう?
実際、昨夜はケダモノのようになったのでは…?』
「判ってるなら聞くな」
電話の向こうでは、弓削がクスクスと笑っている。
『あの後、白川先生から内密に連絡がありましたので、かなりがっついてるだろうと、敢えて連絡は致しませんでした。
久々にラブラブになられたようですので、お迎えに上がるのは昼前にいたします。
今暫し、昨夜の余韻をお楽しみ下さい。
出発する前に、改めてメールをいたしますから』
「ああ。判った」
憮然とした顔で龍嗣は通話を切る。
「龍嗣…?」
サイドテーブルに携帯電話を置くと、璃音が気遣わしげに背中へ腕を回してきた。
「何か困った事でも、起きたの…?」
「いや…、大丈夫だ。
弓削が余計な気を回しただけで…」
忌ま忌ましそうに二台の携帯電話の電源を切る。
「昼前に弓削が迎えにくるそうだ。 それまでの短い時間だが…」
「………?」
「とりあえず、朝食にするか…」
龍嗣は、璃音の唇を啄み、舌で歯列を割った。
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