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 一方、氷室邸では…  璃音がエロ魔神の龍嗣と一緒だからと、瑠維が落ち着けずにいた。  昨夜の猛吹雪の中、大学部の研究棟に置いてきてしまった事を心底後悔して、いっそ一人で迎えに行こうかと思った位だ。 『璃音は弱いから、あのエロ魔神に襲われてないか』…そう思い、焦れ焦れして一晩寝付けなかった。 「夏には結婚するんだし、カラダの関係だってあるんだから、今更周囲が騒いでどうすんだよ」と、小鳥遊(たかなし)にチクリと言われ。 「璃音くんの方が絆(ほだ)されても、氷室さんが加減を忘れないだろうから、一晩くらい許してあげれば?」と、優にやんわり窘められ。 「いくら旦那様でも、番いの相手をヤリ殺すまではしないでしょうし、璃音様の啼き方で判断出来ますよ?  璃音様も多少体力がついておいででしょうから、先月の様に貧血を起こす事も無い筈。  いい加減弟離れなさって差し上げては如何です?」と、弓削にザックリ斬り捨てられた。 『中学生と中年のオッサンの組み合わせ自体、おかしいと気付けっての!!  あの純真な璃音が、下半身ケダモノ男に食い散らかされんのを、指をくわえて黙ってるなんて、そんなおかしい話があるかよッ!?』  瑠維は幼い頃から恋い焦がれれてきた璃音が、日々龍嗣によって汚されてる気がして仕方が無い。  今は心が龍嗣に向けられていたとしても、最終的には自分と番いになるのが一番璃音にとって幸せなんだと、瑠維は強く思う。  たとえ、近親婚が禁じられていたとしても、それが何だというのだ。  どうせ自分は越えてははいけないボーダーを踏み越えてしまったのだから、今更もう一つ踏み越えたとしても怖い事などない。  水上本家のジジイどもや、弓削達が煩く言ってきても、瑠維にとっては痛くも痒くもない。 『ぜってー、璃音は渡さねぇ…。  いずれ、アイツの目が覚めて、エロ魔神から離れる日が来る。  そん時には、璃音と番いの誓いを立てるんだ…。  俺達は、魂の番いなんだから…。  璃音の初めては奪われたけど、魂まで結び付いてんのは、絶対俺なんだから…っ!!』  幹線道路の除雪状況が改善する、昼前には弓削が出発するらしい。  弓削が迎えに行く時に自分もついていき、少々お灸を据えてやらねば…。  瑠維はぎりぎりと拳を握りしめて強く思った。

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