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「………い、……おい!!」
いきなり横合いから手を掴まれ、瑠維はビクリと身を震わせた。
「あ……?」
頭の中を沸騰させそうな思いの渦が解けていく。
「お前、何を思い詰めてんのか知らねえけど、握りしめすぎだろが」
「………?」
半ばぼやけた視界の中にいたのは、小鳥遊で。
その小鳥遊に掴まれた瑠維の手は、爪が掌に食い込み、血が滴っている。
「ま、お前が思い詰めるっつったら、璃音絡みしかねえだろうけどよ…。
ほら、見せてみろ」
ガチガチに強張る指を外され、出血している掌が露わになる。
手近にあった布を取り、小鳥遊は瑠維の手をぐるぐる巻いた。
次いで、隣の部屋に連行され、ベッド脇に置いていたバッグから、消毒液やガーゼ等を取り出し、両手の手当をされる。
「………どーも」
「どーいたしまして。
あのさ、ちょっと言っといていいか?」
「…………」
「確かにお前が恋したのは、一族の中でも極上の子供だろうさ。
だがな、アイツの気持ちは一人にしか向けられてねぇ。
間近で見てて、それは痛い位に解ってんだろ?」
「………」
「俺や忍や、総一たちも、璃音に惹かれた人間だけどさ…。
あの懐きっぷりや心酔っぷりを見りゃ、璃音があのオッサンとずっぷり番いなのは一目瞭然で解ったぜ?
いい加減、アイツの呪縛から離れようって…」
「…………」
「………思わねぇ………ってか?」
「璃音が生まれる前から惚れてんのに、今更忘れるなんてできっかよ」
「勿体ねぇなぁ…。
お前だって、充分極上な子供だぜ?
実際、番いの申し込みが引きも切らねぇんだろ?
より取り見取りの中から、相性のいいのを選んどきゃ、苦労も無ぇだろうに…」
ため息交じりの小鳥遊を、瑠維はキッと睨む。
「そんな間に合わせの相手なんか、俺は要らないッ!!
璃音の代わりなんか、居るわけないし、捜そうとも思わないっ!!」
『おいおいおい…。
思ったより、純粋なタイプかよ…。
鬼夜叉の奴、忠犬二匹製造するなんてアリかあっ!?
コイツ、もう少しツンデレなら、ガッツリ俺のストライクゾーンなんじゃね…?』
意外な瑠維の一面を見て、小鳥遊は後頭部をガツンと殴られたような気になる。
思わぬところで見つけた拾い物か…!?と、小鳥遊は瑠維の手を掴んだまま固まった。
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