274 / 454
・
『ちょっと待てよ…?
コイツの…鈴懸(すずかけ)ン家のガキとの縁談がポシャったの、もしかして…今にしてみればラッキーだったか…?』
"瓢箪から駒"という言葉もあるが、相手を一目見れば瑠維でもクラリときたかもしれない。
何せ、その縁談相手は、色味は少し違うが璃音に顔立ちも気性も似ていたし、啼き声が抜群に良かったのだ。
数年前、旅行先で起きたトラブルで人身売買組織に囚われ、イギリス人の貴族に落札されていたのを知ったのが最近で…。
落札相手の貴族に初めて抱かれ、少しずつ情を通わせて、紆余曲折を経た二人は先日結婚した。
領地の中にある瀟洒なマナーハウスで行われた式は、参列した小鳥遊や弓削もため息が零れる程、二人の愛情の深さが窺われる良い式だった…。
かなりの相性の良さもあっただろうが、式の夜、璃音以上に可愛らしく啼かされまくり、主寝室から漏れる嬌声を聞かされ、客間に泊まった小鳥遊は一晩悶々とする羽目になった。
細身の体が夫になった貴族に組み敷かれ、喘がされ、白蜜をたっぷりと注ぎ込まれる様が、ありありと目に浮かぶような啼きっぷりだったのだから…。
両性具有で細身…中々の極上な体だったから、瑠維であってもあれなら夢中になったのではと、思う程。
用意の良い弓削は、ちゃっかり耳栓をして熟睡していたらしいが。
『今のところ、コイツは真っさらの筈だし…。
考えてもいいかな…?』
小鳥遊が内心舌なめずりをしているのを、瑠維は全く気づいていなかった。
「………?
玲は一体なにをしてるんでしょうね…。』
書類やファイルを運びながら、弓削は首を傾げた。
小鳥遊が瑠維の両手を掴み、じっと見つめている。
瑠維は、何だか居心地が悪そうだが。
『…………?
……………………まさか!?』
少しきつめの玲の目に、猛獣じみた光が見え隠れしている。
『あのヤリチン…、瑠維を狙う気になったのか…?
でも、瑠維は玲の好みの範疇からは外れている筈…。
いや、旦那様の例もある。
もしかしたら、ひょっとする…かも…?』
璃音へ向けていた情を総て別の人間へ向けるとなれば、余程情が深いか、絶倫な者でなければ無理がある。
野獣じみた小鳥遊ならば、その心の虚無を埋めて余りあるのではないか?
弓削は、偶然が産んだ産物を目の当たりにし、うっそりと笑った。
ともだちにシェアしよう!