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『ちょっと待てよ…?  コイツの…鈴懸(すずかけ)ン家のガキとの縁談がポシャったの、もしかして…今にしてみればラッキーだったか…?』  "瓢箪から駒"という言葉もあるが、相手を一目見れば瑠維でもクラリときたかもしれない。  何せ、その縁談相手は、色味は少し違うが璃音に顔立ちも気性も似ていたし、啼き声が抜群に良かったのだ。  数年前、旅行先で起きたトラブルで人身売買組織に囚われ、イギリス人の貴族に落札されていたのを知ったのが最近で…。  落札相手の貴族に初めて抱かれ、少しずつ情を通わせて、紆余曲折を経た二人は先日結婚した。  領地の中にある瀟洒なマナーハウスで行われた式は、参列した小鳥遊や弓削もため息が零れる程、二人の愛情の深さが窺われる良い式だった…。  かなりの相性の良さもあっただろうが、式の夜、璃音以上に可愛らしく啼かされまくり、主寝室から漏れる嬌声を聞かされ、客間に泊まった小鳥遊は一晩悶々とする羽目になった。  細身の体が夫になった貴族に組み敷かれ、喘がされ、白蜜をたっぷりと注ぎ込まれる様が、ありありと目に浮かぶような啼きっぷりだったのだから…。  両性具有で細身…中々の極上な体だったから、瑠維であってもあれなら夢中になったのではと、思う程。  用意の良い弓削は、ちゃっかり耳栓をして熟睡していたらしいが。 『今のところ、コイツは真っさらの筈だし…。  考えてもいいかな…?』  小鳥遊が内心舌なめずりをしているのを、瑠維は全く気づいていなかった。 「………?  玲は一体なにをしてるんでしょうね…。』  書類やファイルを運びながら、弓削は首を傾げた。  小鳥遊が瑠維の両手を掴み、じっと見つめている。  瑠維は、何だか居心地が悪そうだが。 『…………?  ……………………まさか!?』  少しきつめの玲の目に、猛獣じみた光が見え隠れしている。 『あのヤリチン…、瑠維を狙う気になったのか…?  でも、瑠維は玲の好みの範疇からは外れている筈…。  いや、旦那様の例もある。  もしかしたら、ひょっとする…かも…?』  璃音へ向けていた情を総て別の人間へ向けるとなれば、余程情が深いか、絶倫な者でなければ無理がある。  野獣じみた小鳥遊ならば、その心の虚無を埋めて余りあるのではないか?  弓削は、偶然が産んだ産物を目の当たりにし、うっそりと笑った。

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