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『鈴懸の子供は、まるで妖精のような可愛らしさでしたからねぇ…。
あの子供を逃がしてしまったのは、大きな損失だと思ってましたが…。
玲が瑠維を落としにかかるのなら、時間の問題かもしれませんね…』
そのまま小鳥遊達を放置して、ファイルの束をリビングに運び込むと、黒猫メカと世間話をしていた優がいた。
「………?
忍、やけに機嫌がいいんじゃない?
何かいいことでもあった?」
「………いい事といいますか、いい予兆…のようなものでしょうか」
確証がないままの弓削を、猫と優が不思議そうな顔で見ている。
「「いい予兆…?」」
「ええ。
直情馬鹿を、下半身暴走男が落とそうと画策している…と見受けました」
ニヤリと笑う弓削を見て、一人と一匹が逡巡してから気が付く。
「それって……、玲が…」
「瑠維をロック・オンした………ってこと?」
「ええ」
ちょっと意地の悪い笑みを浮かべる弓削に、猫と優が複雑な顔をしている。
「前から趣味が悪いんじゃないかと思ってたけど…」
「玲の趣味って、かなり酷いんじゃないの…?」
「あれの趣味がどうあれ、璃音様から余計な矛先が逸れるなら、私はどうでも良いと思いますけど。
とりあえず、危険因子を二つ遠ざけられそうですし。
ふっふっふ………」
「「あ…、悪魔…??」」
「おや…、今更何を言ってるんです?
私の腹黒鬼畜は今に始まった事ではないでしょうに」
「各務の水上三姉妹」の息子でもある弓削は、荊櫻によく似た悪魔の微笑で応えた。
各務(かがみ)の水上三姉妹とは、弓削の母と荊櫻の母、そして、晶の母の事を指す。
(因みに、瑠維の縁談相手は、晶の父方の伯母の子に当たる事を追記しておく)
「璃音様がエロ魔神と結婚する際に、最大最悪の障壁になりそうな瑠維を引き受けてくれるんですから、止める理由はありません。
扱いに困っていたババを進んで引いてくれるというなら、喜んでその役目を回します」
「………忍はそれでいいの?」
「はい?」
「アナタが一番好きだった荊櫻の息子でもあるのに、瑠維は思いを向ける対象ではないの?」
「………前にも申し上げたでしょう?
直情馬鹿は嫌いなんですよ」
「「………………」」
明らかに不安定な表情で弓削が言い放ったのを、優と猫は複雑な思いで見つめていた。
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