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「お前らさ…」
「何だよ…」
「碌に兄弟喧嘩もしないで育って来たろ?」
「…っ!?」
息を詰まらせた瑠維に、小鳥遊は深いため息をついた。
「普通はな、兄貴が傍若無人な振る舞いをするから、弟が反骨精神持ったりすんのが普通だろ?
それと、一番身近なライバルだったりすんのに、お前、ベッタベタに甘やかして来たろ。
だから、余計に拗れてんじゃねえのか?」
なんとなく図星をつかれた瑠維は、余計に言葉が出ない。
「それとさ…。
アイツに惚れてる事、言ってねえだろ」
「……っ」
真っ赤な顔のまま、瑠維は俯くしかない。
「兄弟らしい事をしてねえ、惚れてる相手だっつうのに、正面からぶつかってもいねぇ。
そりゃ、鳶に油揚げ攫われても文句言えやしねえだろうが」
「うっせ、あの目を見たら、アイツに傍若無人な振る舞いなんか出来るかよっ!!
それに、兄弟として見てねえなんて言えるか!!
璃音にフラれたら、兄弟としてもいらんなくなんだろっ!!」
「そうやって逃げてるから、お前らどっちつかずの中途半端なんだろが。
いいか?
喧嘩腰じゃなくていい、せめてお前の気持ちは伝えておけよ?
そんなもんを伝えた位で、簡単に揺らぐ程度の脆い関係なのか?
違うだろ?
100%じゃなくていい、せめて半分位は伝えておかねえと、絶対後悔すっぞ?」
やけに実感の篭った言葉に、瑠維はあんぐりと口を開けた。
「何か、すんげぇ実感篭ってんな」
「実感?
そりゃ篭るだろうさ。
なにせ、告白し損ねてお前のオフクロを逃がしちまったんだからさ」
「………は?」
誰が、誰に?
瑠維は理解が出来ない。
「だから…、
お前の母ちゃんの荊櫻に、年上の女だからって告るの躊躇ってるうちに、さっさとお前が出来て結婚されちまったんだよっ!!」
「…誰が?」
「俺が」
頭の中がクラクラする。
「後悔しまくりだったぜ?
トライもしてねえのに横合からかっ攫われたんだからよ。
早々と諦めんのは、後々ドカンと来るぜ?
だからさ、少しはぶつかってみろよ。
お前の弟はそんな事でお前から遠ざかる程、心が狭い人間じゃねえだろ?
違うか?」
ストン、と。
小鳥遊の言葉が胃の腑の下まで自然に落ちた。
確かに、璃音と本音でぶつかってはいない。
それは、至言だった。
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