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「近親噛みは、必ず片方が死ぬ」と、母が言っていた。
璃音を噛んだあの日から、璃音も瑠維も普通に生きている。
だからこそ、自分達には当て嵌まらないのだと思っていたのだ。
きっと、自分達は特別な番いだから、お互い高め合う事はあっても死に直面するような事は有り得ないのだと…。
自分の想いを篭めた甘噛みがなければ、あんなに早く璃音が龍嗣に体も心も捧げたりしなかっただろうか?
もっと違う状況へ進展していたのか?
瑠維は、心が締め付けられるような気がした。
総ては、遅かった。
運命の分岐点は、とうにすぎていた。
掛け違った釦のように、外してしまったタイミング…。
「もう…、思い直すのは…遅すぎんだよ…」
瑠維は、幾つも越えてはいけない境界を越えてしまったから。
引き返すことも、もうできはしない。
赦されないであろうことをしてしまっていた…。
そして。
事態は、既に最悪の方向へと転がっていたのだから…。
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