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璃音の小悪魔アイズに壊れた弓削が正気に戻ったのは、30分後のことだった。
「うう…っ
油断をしていたとはいえ、璃音様のカタルシスウェイブに負けるとは。
この弓削、修業がまだまだ足りません」
運転しながらも、まだショックから抜けきれていないようだ。
「弓削…。
璃音の小悪魔アイズは荊櫻譲りなのだろう?
そう気にするな。
私も最近まで負けていたからな」
「いえ…。
同じ各務の水上出身なのですから、耐性があって然るべきなのです。
それが完全に引き込まれてしまいました…。
と、言うか…小悪魔っぷりに磨きがかかっている気がするのは、私だけでございますか?」
「いや…。
それは私も何となく思っていた。
もしかして、璃音の媚香が私だけに限定されたせいで、小悪魔アイズが強力になっているような気がする…」
「………璃音様の媚香と小悪魔アイズについては、水上本家に連絡をしておこうと思います。
血の濃さもありますが、あまりに強すぎるように感じますので…。
あまり考えたくはないのですが、先祖帰りでもなさっているのかもしれません」
「そうか…。
それは任せる」
龍嗣に凭れてすよすよと眠る璃音は、あどけない中に色香が混じっている。
濃すぎる血が璃音にとって先々障害やトラブルを呼び込まないようにと、龍嗣は願うばかりだ。
「そういえば、さっき"各務の水上"と言っていたな…。
何かあるのか?」
「あぁ…、旦那様はご存知無かったのですね?
水上の一族の中でも、昔、公家等とも繋がりが強かった各務(鏡)家の末裔なんです。
執着癖が強く、血族結婚を繰り返した割合が一番高く、異能、異常が最も出やすい家系でもあります。
晶様の父方の従姉妹、咲智(さち)様の子供に至っては、アルビノの上に両性具有でしたし…」
「………。
何年か前に行方不明になっていたという子供の事か?」
「ええ。
あれも、植物と意志を通じるという異能を持っておりました。
非合法のオークションで運よく気の優しい貴族に落札して頂いたからと、領地にある農園を区画整理して上物のワインを作りまくっていたようです。
しかもその利益で、放置されて廃墟になりかけていた幾つかの城も総て整備され、観光収入も数倍に上り、公爵の資産を倍増させたらしく…」
弓削も流石に苦笑いをしている。
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