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 各務の中で、一番情が深いかも知れない璃音だから、寄る辺ない状態の君の心を感じ取ったんじゃないかって思ったんだ。  だから、迷惑じゃないなら、璃音を貰ってやって欲しい。  それでね、可愛い次男坊を、君の未来の伴侶として、育ててみたよ。  傷心で移り気になってしまった君を癒せるように。  それと、会社のトップに立つ龍嗣の経営の助けが出来るよう、技術畑のパートナーとして寄り添えるように。  荊櫻はあまり乗り気ではなかったけれど、二人で頑張って純真無垢で一途な子に育ててみたから、もし気に入ったなら(私の代わりになんて事は言わないけれど)、璃音に沢山がっついてくれたらいいな…。  璃音は、元々の気質もあるだろうけど、健気だし、とても可愛らしく啼いて龍嗣を喜ばすんじゃないかと思う。  君に焦がれて禁断症状を起こしたり、夢遊病になったりするくらいだから、相性は決して悪くない筈だし。  体を繋ぐ事に関しては、全く疎くて知らない筈だから、龍嗣好みに育ててみてよ。  ずっぷりと愛してやって、総てを教えてやって貰えたら嬉しい。  誰とも長続き出来ない程に虚無を抱えた龍嗣が、璃音の深い愛情を得て、心が満たされますよう願っています。  …って、原因を作った私が言える事じゃないね(笑)  沢山の幸せを、龍嗣が味わってくれますように。               晶  追伸  もしかしたら、もう、璃音は君に愛されて、かなり淫らな獣に育っているかな?  だったら、尚更嬉しいんだけど。  一応、対の白い狩衣を用意しといた。  璃音との結婚式で着て貰えるように、かなりいいものを作ってあるからね?  二人に、とても似合う筈だよ。  お互いに篭絡しあって、魂が溶け合えるような関係になれるよう、願っています。』  晶の願いが書かれた手紙は、龍嗣にとって嬉しくもあり、哀しくもあった。  我が子よりも、龍嗣の幸せを願っているようだったから。 「馬鹿だな…、振った相手を気遣ってどうする…」 「………?  何か変な事でも書いてあった?」 「いや、晶らしい言葉が沢山書いてあったよ。  これを私に渡す為に、ここに寄ったのかい?」 「うん。  あとね、お母さんのもあるんだ」  龍嗣の背中に戦慄が走ったのは、気のせいではあるまい…。

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