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「………」  荊櫻の手紙を読み終えた龍嗣の背中には、嫌な汗が流れていた。  大まかな内容をかい摘まむと、『璃音を大事にしないと、ただでは済まさん』という文面が並んでいたのだ。 「龍嗣…?  どうしたの?蛇に睨まれたカエルみたいになってる」  璃音がハンカチで汗を拭きとってくれた。 「君を大事にしないと、如何なる状況であれ、ただでは済まさんと書いてある…」 「見せてみて…」  恐る恐る璃音に渡す。 『親愛なるエロ魔神へ  これを読んでいるという事は、璃音の番いがお前という事に決まったんだな?  正直、最も璃音と番わせたくない相手に嫁がせるのは、母親として不本意極まる話しなのだがな…。  生涯あれを可愛がってやれるという覚悟が出来ているならいいが、途中でポイ捨てなんぞしてみろ、地獄の底まで追いかけて行って確実に息の根を止めてやるし、畳の上では決して死なさんぞ。  万が一、私と晶がこの世に無い場合は、璃音を棄てたペナルティーを忍に任せてある。  確実にお前を抹殺するよう命じたからな?  晶が大丈夫だと言い張るから璃音を預けるが、健気な子供を裏切る真似だけは絶対するな。  浮気なんぞしてみろ。  ぶった切ってやるからな?  私から言いたいことはそれだけだ。  以上、しっかり守れよ?             荊櫻』 「………。  なんだか、お父さんとお母さんで、内容が逆っぽく見えるの、気のせいかなぁ…?」 「荊櫻は、昔から男前な女だったからな…」 「少しぶっきらぼうな所があったけど、こんな文面、初めて見た…。  でも、何を切るのかなぁ…?」  それだけ、成長の遅れた璃音が気掛かりであったという事だろう。  "切る"というのは、文字通り"去勢してやる"という意味だと龍嗣は受け取った。 『無体な事をすれば、問答無用で弓削に抹殺されそうだな…。  つか、あれに去勢されるのは恐ろしいと思うのは私だけか…?』 「大丈夫、僕が弓削さんを止めるから、龍嗣に痛い思いさせないからね?」  にこおっ、と璃音が微笑む。 「浮気したり、ポイ捨てしたり、無体な真似は絶対しないから安心しろ。  代わりに、君を生涯かけてがっついてみせるからな?」  不安げな璃音の唇を、龍嗣は軽く啄んだ。

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