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「ん……、んん…」  軽い啄みから、深く重ねられる唇。  花びらのような唇を割り、龍嗣の舌が差し入れられた。 「は……、ふ…ぅっ」  少しずつ璃音の体から力が抜けて膝が崩れる。  その華奢な体ごと、龍嗣はベッドの上に倒れた。 「………ん、あむ…っ、………っふ…」  甘く蕩ける舌が絡み合う。 『ダメ…、気持ち良すぎて溶けちゃうよ…』  逆らえないまま、龍嗣の舌を受け止める璃音。  ぷちゅ…と音がして、一旦唇が離れ、再び重なる。 「ん、んん…」  甘い口づけに酔う璃音に龍嗣が覆い被さり、更に口づけが深くなった。  何とも淫らな口づけの水音に気づき、紅茶と茶菓子を手に階段を上っていた弓削は、足を止める。  チュ…  チュ… 「あふ…、んんん…」  鼻に抜けるあえかな声は、紛れもなく璃音のもの。 『少し目を離したらこれだ…。  さすがはエロ魔神…』  足音を殺し、ドアの隙間からそっと覗いてみると、ベッドの上でラブラブな二人がキスをしていた。 『ツインテールをしたままだからですかねぇ…?  本当に普通のカップルみたいに見えるから不思議だ…』  流石に恋人同士のいちゃつきを邪魔する訳にもいかず、弓削はそっと階段を降りる。 『とりあえず隣のご主人に、お礼のお菓子を持って行くか…』  焼き菓子をバスケットに入れ、弓削は玄関から出た。  隣の主人は久しぶりに見た璃音の成長に驚いたのと、弓削の焼き菓子に大層感動してくれて、なかなか話しが尽きなかった。  隣家の主人に捕まったまま、弓削は隣家で世間話、束の間の平和が横たわる水上屋敷の中で、璃音と龍嗣は唇を重ねる。  古い恋の残滓が心の中から消えて、璃音への想いが膨らんでゆく。  甘くて切ない想いが、互いの唇と、触れ合った指の間で伝わった。 『大好き…、龍嗣』 『愛してる、璃音…』  こぼれ落ちた恋の残滓の跡を満たすのは、紛れも無く璃音が与えてくれた愛情と、龍嗣が璃音へ向ける愛情だ。  気まぐれなどではなく、常に向けられるひたむきな想い。  愛人契約を破棄して恋人契約に変えたあの日、二人の間に生まれた深い情愛。  誰かの代わりでもなく、他の誰かに向けるものでもない。  それを忘れることなど、決して有り得よう筈がないだけの想いが、肌が触れた場所から流れ込んだ。

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