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「あ……、あぁぁ……ッ!!」
背中を反らし、厚い胸板に後頭部を擦りつける。
揺さ振られながら龍嗣に唇を塞がれた璃音は、舌を差し出して深く受け入れた。
凄絶なまでの色香を放ち、すべての男を魅了する程の肢体。
華奢な体を桜色に染め、あちこちに花びらのような模様を散らして。
醜悪ならまだしも、その様が美しいからこそ瑠維の精神を灼くのだ。
『違う…。
違う………ッ!!
こんなケダモノみたいなのは、璃音じゃないッ!!』
後ろから貫かれ、花芯と蕾を責められ、唇すらも深く犯されるなど、ありえる筈がない…、瑠維にはそれが信じられない光景でしかなかった。
「あっ、ああ…っ、龍嗣…、んっ、龍嗣…っ、好き…大好き…!!」
「私もだ…っ、愛してる…、私だけの淫らな璃音…。
がっついても、がっついても、まだまだ…全然足りない…」
「…いいよ…、がっついて…っ、もっともっと来て…っ!!
僕のなか、龍嗣でいっぱいにして…っ!!」
上も下もグチュグチュと音を立て貪られる、そんなケダモノじみた璃音の姿や目を見るのが怖くて、瑠維はそっと階段を降りる。
『早く…。
早く降りなきゃいけない…。
あんなの璃音じゃないんだ。
だって、璃音は純真で無垢な子供だったんだから…。
きっとあれは気のせいだ。
今、俺は変な夢を見てるだけ…。
目が覚めたら、きっといつもの璃音がいるんだから…っ』
璃音と龍嗣、そして弓削に見られないよう、気付かれないように家から出さえすれば、この変な夢が覚める筈だと、必死で静かに階段を降り、そっと玄関から出た。
幸い、弓削にも見られることなく、瑠維は家から出る事ができた。
『早く…早く帰ろう。
きっと氷室の家に着けば、いつもの璃音がいて、"瑠維"と甘えるように笑いかけてくれるはずなんだ。
さっきのは夢だ。
質の悪い夢なだけ。
俺が知ってる璃音は、いつも穏やかで綺麗で、無邪気で無垢なんだから。
汚いことなんか、何一つ知らない天使みたいな子供なんだから…。
さっきのは顔の似てる誰か…。 そう、璃音に似ているっていう、俺の見合い相手がエロ魔神とまぐわってただけで、璃音じゃない。
現実にある事なんかじゃ、あんなのが璃音の筈ない…ッ!!』
瞼に焼き付いたさっきの光景を振り切るように、瑠維は必死で水上の屋敷から離れた。
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