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「り、璃音様…?」  うろたえる弓削の前に立ち、璃音は目を潤ませた。 「あの…、怒るなら僕も一緒にして、弓削さん」 「しかし…」 「だって、僕も龍嗣にがっついたよ?  僕ね、自分から龍嗣に乗っかったよ?  だから、怒られるなら、僕も一緒じゃなきゃおかしいでしょ?」  確かにそれは一理ある。  だが。 「璃音様、未成年の貴方に手を出している自体、責任の大部分は旦那様にあります。  ましてや、体を繋いでいる時の事は…」 「龍嗣に主導権があるから、僕は断れないっていうこと…?」 「………はい」  龍嗣に抱かれる側の璃音には、断ることも何かを頼んだりすることも出来ないと、弓削は思っている。  しかし、それは少し違うと璃音は思うのだ。 「ちがうよ、弓削さん。  だって、龍嗣はいつも僕の気持ちを優先してくれてる。  強制的にされたことなんか、一度もないもの。  龍嗣に、中に出して欲しいって僕が頼んでたんだもん」 「………」  弓削は、絶句するしかない。 「"どうして"って思うよね?」 「はい」 「雪を覚えてる?弓削さん」 「………はい」  忘れる筈がない。  つい先日、イギリスの地方にある公爵領で行われた結婚式…。  その式で、貴族の男性と結ばれたのが雪だった。  本来なら、形ばかりの見合いをして瑠維の花嫁になるはずだったアルビノの子供…。 「その雪がね、結婚式の前に連絡をくれたんだ。  雪はね、相手の人に凄く大事にしてもらえて幸せだって言ってたよ。  それでね…」 「………」 「僕たちは、大事な伴侶が子供をつくるチャンスを奪っている。  なのに、物凄く大事にして貰えてる。  だからこそ、相手が注いでくれる愛情を大事にしなきゃいけないって…」  璃音は、両手を臍の辺りに当てる。 「伴侶から注がれる愛情が、どれだけ嬉しいかって思うし、蜜だって全部注がれたい。  未来に繋がる行為ではないけれど、深く愛されて注がれたなら、僕らはここに有りったけの愛を孕まなきゃダメなんじゃないかって…。  雪が言ったの、僕もその気持ち、凄く判ったんだ…。  だから、龍嗣が使おうって言ってくれてるけど、僕が使わないでって頼んだの。  だから、龍嗣だけを怒らないで」  璃音は、弓削に食い下がった。

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