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「ふぅ…」
リビングのソファに足を投げ出して座り、璃音は少しむくれていた。
『せっかくの休みだから、龍嗣と一日ずうっとベタベタしてたかったのになぁ…』
かなり濃密で淫らな時間もあったのに、璃音は何故か龍嗣と離れたくなかったのだ。
『こんな日にややこしい交渉が重なるなんて、ついてないや…』
パタリと体を倒し、ソファに寝そべる。
ふて腐れて寝そべるなど、常の璃音にはない事だった。
弓削がいたなら、驚いて目を丸くしているに違いない。
「璃音、濃いめのミルクティーでも煎れるか?」
「ううん。 今はいい…」
気遣うように瑠維が声を掛けても、何一つ気が乗らない。
声を掛けて欲しいのも、触れて欲しいのも、たった一人だけだったから、瑠維の言葉すら煩わしい…。
寝そべったまま、少しずつ覆いかぶさってくる睡魔に意識が侵食されてくる。
『龍嗣…早く帰ってきて。
不安でぐるぐるするのが、きっと治る気がするから…』
トロトロと眠りに落ちながら、璃音は龍嗣を呼び続けた。
寝息が穏やかになった璃音を見遣り、小鳥遊が少しホッとした顔になった。
「初めて見た、あんなふて腐れた璃音くん」
濃いめの紅茶を一口啜り、優も驚きを漏らす。
「普段我が儘言わないから、ぐずると尚更ビックリするよな…。
つか、あんなふうな璃音って、今まであったのか?」
「いや…、あいつ、小さい頃からのんびりしてるっつーか、穏やかでマイルドな子供だったから、あんまり見たことねーし。
…そういや、こないだの停電騒ぎの時に、少し機嫌悪かったっつーか、俺の事拒否ってたかも…」
瑠維の言葉に、小鳥遊が一瞬考え込む。
「今までマイルドで来て、最近反抗的…?
おいおい、今更反抗期とか言わねえだろうな…」
「え? だってもう15歳でしょ?
二つめの反抗期なんか、既に終わってる筈なんじゃ…」
ヒソヒソ言い合う三人。
「反抗期かどうかは別にして、どう見ても今日はエロ魔神と離れたくなかっただけだろ?
………多分」
眉を寄せ、少し口を尖らせたまま眠る璃音。
まるで一ヶ月前から約束していたデートをドタキャンされたかのような不機嫌っぷりだ。
「しょうがないんじゃない?
ずっと禁欲してきて、我慢を強いられて来たんだし」
優が龍嗣のジャケットを手に取った。
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