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「………」  微妙な顔つきの瑠維を伺いながら、優は龍嗣のジャケットを璃音にかける。  唯一無二の伴侶の香りを嗅いだからか、少し璃音の表情が和らいだ。 「寝ていても、伴侶の肌の香りは解るんだねぇ…。  ほら…、表情が柔らかくなったよ?」  璃音の額の髪を梳いてやり、優は微かに笑う。 「ふふ…。  ガレージでふて腐れた時なんかさ、背中の毛を逆立てて威嚇する子猫みたいで、ホントに可愛かったね…。  誰にも取られたくないから、片時も伴侶と離れたくないって張り付いちゃうなんて、そんな独占欲も持っててさ…。  こういう乙女な所は、お父さんの晶にそっくり」  クスクス笑い、璃音の顔を覗き込む。 「父さんに…?」 「中身がね、凄く似てるよ…。  普段は穏やかなくせに、いきなり独占欲発揮しちゃう所とか、好きな相手に対して健気で尽くしまくっちゃう所とか…ね。  外見は、乱暴者で誰も敵わなかった荊櫻にそっくりな癖に、中身はまんま晶なんだもの。  遺伝って、面白いよね…。  もういない人達と同じ物を持ってるから、懐かしく思ったり、こそばゆい気持ちになったりして…」  璃音の寝息が深くなったのを確認し、優は璃音から離れた。  窓際の椅子に座る小鳥遊の近まで行き、軽く息をつく。 「恋ってさ、本当に残酷だね…。  ひたむきに想うだけで全部叶うなら、どんなにいいんだろうって思うよ…。  例え、複雑に絡まった関係でも、想いを受けとって貰えたなら誰も苦しい想いをしなくて済むのにね。  瑠維が抱える想いも、璃音くんの心に伝わってたら、きっと救いがあるんだろうけど…」 「………」 「方向が違っても、君の想いが報われる時が来ればいいよね。  僕ら六人の想いより、きっと君が璃音くんを想う気持ちが、ずっとずっと深いだろうから。  その総てを、理解する事は出来ないけれど…。  一族の中で許されてない近親噛みをする程の深い恋が、いつか報われて欲しいって願うよ。  寄る辺ない想いをひきずったまま君が苦しみ続ける事を、多分誰も喜ばないんじゃないかな?  勿論、君のお父さんとお母さんもね…。  玲も、そういう気持ちを君に言わなかったかな?」 「………」  小鳥遊とは違う穏やかな言葉は、瑠維の心を掻き鳴らす。  その言葉を一年前に聞けたなら、何かが変わっていたのだろうかと、瑠維は思った。

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